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外構事例
【実例】縁側のある庭|飛び石・垣根・苔で魅せる追憶の和風庭園
庭の背景―“京都の風景を、毎日の視界に” 施主様の依頼は和の趣の庭。奥様と京都を何度も旅されたというお話を伺い、その記憶がふとよみがえる風景を目指し、最も長く過ごす居間に主庭の風景を据えました。縁側に出て季節の空気を感じられる場所を確保。動線は短くしつつも、視線は豊かに深く導く、設計が見どころです。 “見せて隠す”入り口の四ツ目垣 公道から240cm程度奥に下がったところに、境界として、四ツ目垣を設置。垂直に立てる「立て子」と、水平に渡す「胴縁」で方形の透かしをつくる伝統意匠は、庭の飛び石や景石をほのかに見せ、和の情緒を高めます。 四ツ目垣の透けた向こうに飛び石や景石が見える。 駐車場のこげ茶色の立て格子で手前の四ツ目垣根が引き立つ。 四ツ目垣の名称の由来は、透かし模様が四角形に見えることから。茶の路地庭園には欠かせない仕切り垣とされています。実はこの四ツ目垣の竹は、樹脂でつくられた人工の竹で、シュロ縄で結んでつくっています(合成竹垣材料 こだわり竹®・エコ竹 タカショー)。 竹のしなやかな素材感を再現しつつ、屋外耐候性と耐久性を両立します。 道路から右手に駐車場がありますが、ここにはこげ茶色の立て格子が使われており、四ツ目垣の明るい色が際立ちます。 飛び石や延べ段のアプローチ 飛び石を歩きながら左右の景石や植栽を眺める。 四ツ目垣の間を抜けると、白砂利に飛び石、苔の築山、延べ段が連なります。ここは歩いて味わう序章の庭。 飛び石は昔、着物で歩くことから、歩幅を40cm前後でしたが、今では現代の歩幅に合わせて、40~60cm程度に設定。 飛び石と延べ段、コケの築山の共演。 飛び石を踏んで歩みを進めると、右手は四ツ目垣、足元はコケ、左手はこんもりと盛り上げた苔の築山に、アオダモの株立ちが。飛び石と延べ段の組み合わせも日本の芸術を感じさせるデザインです。 主庭の構成は紅枝垂れを核に、建仁寺垣で背景を整える 建仁寺垣のある和風庭園。 主庭は紅色の紅枝垂れ(ベニシダレ)を核に、左右に植栽を配置。建仁寺垣のアイボリーよりの黄色と植物の色彩構成が見事。 地面は白砂利と苔の緑、要所に影石と飛び石を置き、居間から眺める風景として過不足のない風景に。単調になりがちな奥行き方向は、樹高差と色の重ね、コントラストで抑揚をつけました。 メンテナンスなしで長持ちする建仁寺垣 経年劣化に強い人工竹垣(エバーバンブー)。 じつは、この建仁寺垣も樹脂でつくられた竹垣で、内部はASA系樹脂で耐候性、耐熱変化、耐退色性に優れ、表面はABA系樹脂で、機械的衝撃強度の高い樹脂です。著しい変色や割れについては、5年保証といわれていますが、10年でも長持ちするようです(エバー2型セット【エバー建仁寺セット】タカショー)。 建仁寺垣とは、京都の建仁寺に由来する最も一般的な竹垣の一種で、割竹を垂直に隙間なく並べ、半割の竹を押縁にして水平に並べ、シュロ縄で結んで固定しています。 奥からお庭を眺める 手前のノムラモミジの植栽で生きる遠近感。 灯籠、筧、手水と景石。 庭の一番奥まで進み、振り返ってみると、手前のノムラモミジの向こうの背景の奥行き感が見事です。ベニシダレの脇にある灯籠、筧、手水(ちょうず)の配置バランスも絶妙。正に和風庭園の象徴で、飛び石の並びで手水(ちょうず)に向かう動線をつくっているところがポイントです。 濡れ縁と飛び石。 自然で趣のある延べ段。 右手には濡れ縁に行く段差の工夫や、帰り道になる瓦をはめた延べ段など、石の並びが和風満載の趣を感じました。 出口に向かうまで退屈しないアプローチ 足元の飛び石周辺の植栽や景石。 帰り道の飛び石廻りの景石と、下草の配置具合やコケと細かい白砂利の境界の曲線が柔和なイメージ。 歩きながらの眺めは飛び石の配置で。 出口は直線で抜けず、右手に大ぶりの景石を据え、飛び石を左から右へ、大きく曲げることで歩速を緩め、見送りの景色を演出。 苔と白砂利の柔らかな曲線境界、点在する下草が視線を拾い、最後まで退屈させません。 まとめ 和風庭園は竹垣、砂利、飛び石、延べ段、景石や、植栽の配置具合で、趣のある雰囲気が生まれ、落ち着きや安らぎを感じる庭になります。 灯籠や筧(かけい)、手水鉢(ちょうずばち)を設置することで、和風庭園のイメージが強調されます。この現場事例では築山をコケにしていますが、タマリュウやシダ類を植えている例や、延べ段も、デザインバリエーションは豊富です。 また、植栽もマツなどの針葉樹やイロハモミジなどの紅葉がキレイなものなどさまざま。メンテナンスの労は少なく、四季ごとに穏やかに変わる風景を楽しめるのが和風庭園の魅力。ガーデン計画の選択肢の一つとしておすすめです。 設計施工:帝樹園 庭正 長橋正宇
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外構事例
アンティークテイストの参考に! 愛犬と一緒に入れるおしゃれなカフェの外構&内装デザインアイデアを拝見
レトロな外観デザインが目を引くカフェ 焦げ茶色をベースにしたレトロな雰囲気のファサード(建物正面)。 これまでいろいろなエクステリア現場を取材してきましたが、カフェ「GAKU NO TOBOE」は極めて珍しい外観デザインです。建物全体の大部分を占めるベースカラー(基調色)はこげ茶色で、アクセントカラー(強調色)としてベージュの石壁を中央付近に配置。全体がこげ茶色の中に、明るい石壁のコントラストが効いています。この石壁、目地がないことを不思議に思って施工担当者である「ヘブンズガーデン」の宮元健太さんに尋ねてみると、「じつは、90×240cmの1枚の紙のように薄い石材を張り付けているので、目地が入っていません」とのこと。石の質感があり、ベージュの中にもいろいろな色が微妙に混ざり合っているので単調になりません。 鎧戸のような壁や窓の桟など、デザインを構成する要素がじつにレトロ。 石壁の左右両側にある鎧戸のような壁、さらにその隣の白目地の黒いタイルが印象的な腰壁に、ガラスのようなポリカーボネート素材の窓にかかる桟のレイアウトなど、全体的にどこか懐かしいレトロ感満載なデザイン。 ポリカーボネートは、ガラスの約200倍以上、アクリル樹脂の約50倍以上もの割れにくい「耐衝撃性」、マイナス40℃~120℃という幅広い温度範囲で使用可能な「耐熱性」、燃えにくい「自己消火性」、紫外線に強い「耐候性」を備えたエンジニアリングプラスチックです。ガラスのように透明性のあるもののほか、半透明の素材もあり、カーポートの屋根などにもよく使われます。 水平に渡した黒いフラットバー(平鋼)がポイント。 また、縦板張りの部分には黒いスチールのフラットバーを設置し、レトロ感を強調しています。 花壇やステンドグラスでアクセントをプラス 黒タイルの花壇(写真左側)。 店舗の横はご自宅のエントランス前になっていて、ここには黒タイル×白目地の花壇が設えられています。花壇は、店舗正面の黒タイルで仕上げた腰壁と同様な仕上げで、統一感をアップ。花壇の背景となる壁面は、こちらも店舗正面と合わせた縦板張りで、上部にはステンドグラスも取り付けられています。全体の構成として、日本住宅のように、濃いこげ茶色の梁や柱をデザインの中心に据えていることがイメージを引き締め、まとまりを生むポイント。この構成も、レトロ感を演出している源のようですね。 柱の下部には何やら小さな丸が…。 施工会社名の入ったエンブレムを発見。 花壇の背景にあるこげ茶色の柱の足元を見ると、丸い何かが貼ってありました。近づいてよく見ると、施工会社のエンブレム! 施工会社名を表示するのは設計施工に責任を持つという意味もありますが、この社名エンブレムはそれだけではない素敵さ。こうしたエンブレム1つとっても、会社としてのセンスのよさを示す大切な要素です。 落ち着けるテラス席は愛犬と一緒に まるで室内のようなテラス席のスペース。 出入り口の扉のすぐ前がテラス席。 続いて、店内のデザインを拝見。入り口の扉を開けると目の前にあるのは、ドッグエリアでもあるテラス席です。壁があり、座席によっては仕切りもあるので、テラスでありながらも室内のように落ち着いた雰囲気。愛犬も一緒に入れるので、お散歩途中に寄るには最高のスペースですね。天井部分は屋根ではなくシェードを設置しているため、柔らかい光が入ってきます。外観同様に、縦板張りや鎧戸風のデザインがされた壁は、ポイントとなる柱で切り替えられています。 内側から見るステンドグラスは、光を透かしてひときわ鮮やか。 レトロなブラケットライト。 この場所にしっくり馴染む額縁の絵も素敵。 この空間を彩るのは、赤、紫、青色に輝くステンドグラスや、レトロデザインの壁に取り付けるブラケットライトなど。額装された素敵な絵も飾られています。どこを見てもとってもおしゃれで、つい長居したくなりますね。 仕切りがあるので愛犬も安心してくつろげるデザイン。 店内はアンティークな素敵デザインが目白押し! 店内の窓や船の置物など、どこを切り取っても素敵な装飾の数々。 テラス席の奥は室内エリア。明るいベージュベースの壁紙にこげ茶色の腰壁の組み合わせがシックで、天井に目を向ければこげ茶色の化粧梁や垂木が印象的な、落ち着いたデザインです。窓にはめ込まれた繊細なステンドグラスが美しく、立派な船の置物と相まって、瀟洒な雰囲気を作り上げています。 入り口付近に灯るアンティークなシャンデリア。 店内の全てのインテリアは、色とデザインの方向性が統一され、選び抜かれた空間演出がされています。 オーナーのご厚意で、特別に厨房出入り口を見せていただきました。厨房はまるで外国のお店みたいですね! 小さな扉を開けると… なんと照明のスイッチが! ここで、壁の一部にこげ茶色の小さな扉を発見。取っ手がついているので開けてみると、なんと照明のスイッチがありました。このケースはオーナーのDIYとのことですが、スイッチを隠すことで空間の完成度がより高まりますね。また、テイクアウトメニュー板も、ワインのコルクを並べたベースにメニュー板をつけたオリジナルなデザイン。小物一つひとつにオーナーのこだわりを感じました。 テイクアウトメニュー板もとってもオシャレ。 まとめ ペット同伴可の飲食店は以前に比べれば増えましたが、それでもペット家族数から比較するとまだまだ少ないのが現状です。 今回ご紹介したカフェ「GAKU NO TOBOE」は、そんな貴重な飲食店。店内は明るいベージュをベースに、こげ茶色をアソートカラー(配合色)として腰壁や化粧梁、垂木に採用し、ブラケットライトやステンドグラス、素敵な絵を飾って、一貫してアンティークなインテリアの雰囲気を作り上げています。 そして外観であるファサード全体とインテリアのようなテラス席には、店内のイメージをそのまま反映し、統一感のあるデザインに。壁面の仕上げは縦板張り、鎧戸風、白目地の黒タイルなど、いくつかのパターンが使われていますが、カラーの明るさを統一しておくことでまとまりのあるデザインになります。アンティークなデザインに興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください 「GAKU NO TOBOE」は、アルゼンチンの国民的な料理「エンパナーダ」が美味しいお店です。「エンパナーダ」はスペイン・ポルトガル発祥で、中南米や北米などで広く食べられる料理。アルゼンチンでは主食として親しまれています。小麦粉の生地に鶏肉や牛肉、野菜などを包み、焼いたり揚げたりしたもので、大きめの餃子のようなイメージです。アルゼンチン料理を食べたい方は、住宅街の一角にあるお店に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか? ※営業日と時間はHPで要確認。GAKU NO TOBOE -がくの遠吠え-gaku-no-toboe 設計施工:ヘブンズガーデン 宮元健太
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【庭実例】和と洋、2つの庭が共演する住まい──眺めて癒やし、出て楽しむ贅沢空間
緑の舞台が広がる、小さな庭の大きな奥行き 玄関を中央に、左右に和の庭と洋の庭があるM邸。和の庭は、奥の塀に向かって高くなる法面にしているため、実際は6畳程度ですが、よりゆったりと広く感じられます。この法面はカモシゴケやスナゴケなどの複数のコケ類で青々と覆われ、足元から立ち上がる木々や景石を引き立てる柔らかな舞台となっています。 樹木は3種。左奥に株立ちのアオダモ、その手前にコハウチワカエデ‘関の華厳’、右に枝垂れモミジ。これらを不等辺三角形に配置し、なおかつ樹高に差をつけることで、限られた空間の中にも奥行きと動きが生まれ、目に心地よい自然な景観が広がります。 コハウチワカエデ‘関の華厳’。葉の形に特徴がある園芸品種で、従来のコハウチワカエデよりも雄大な樹形をしている。 高木、中木、低木を不等辺三角形に配植する方法は、庭園で用いられる伝統的な「真・対・添え」の構成で、視線を奥へと誘導し、庭全体に奥行きと豊かな表情を与えてくれます。この美しい形を維持するために、植栽の定期的な剪定は欠かせません。 庭にアートを宿す六方石と、新潟の名石・八海石 和庭の骨格を形づくるもう1つの要素が石。ここでは上部を磨き上げた六方石が、自然が彫り出した彫刻のような存在感を放ち、庭の個性を決定づけています。六方石とは、溶岩が冷えて収縮する際に形成される、五角形や六角形の割れ目を持つ柱状の火山岩で、硬質で規則的な形状が特徴です。その美しい造形は庭園において、門柱や景石、縁石、飛び石など幅広く活用されてきました。 鏡面に葉影を映す六方石。夜間はここに光が反射するようにライティングもセットされている。 モミジや苔の柔らかな表情の中で、直線的なフォルムが際立つ六方石。その磨かれた石面には季節ごとの枝葉が映り込み、庭に格調と四季の趣を添え、アートのような景観をつくり出しています。 また、この庭では八海石も用いられています。八海石とは新潟県魚沼市を流れる魚野川の下流で採れる硬質な自然石で、青みや緑みを帯びた濃い黒色が特徴です。苔や植栽の鮮やかな緑と対比して、庭に深い落ち着きと重厚感を生み出します。地元ならではの石を取り入れることで、庭は土地の風土とより強く結びつき、新潟らしい景観を体現しています。 延べ段から水栓まで、石が支える機能美 玄関アプローチから見た和の庭。 そして、アプローチにはサビ御影石と和良石のゴロタを組み合わせた延べ段を設け、自然石のボーダーが足元から庭全体を柔らかく引き締めています。 さらに機能面にも石を生かした工夫があります。例えば、集水桝はピンコロ石で囲ったコの字形の中に景石を重ねて隠し、点検口であることを感じさせません。 景石の下には集水枡のフタ。 また、庭の角には住宅の石張り調の立水栓と水鉢を設え、実用性を損なうことなく庭の雰囲気に自然に溶け込ませています。生活に必要な設備さえも「石の造形」として表現されている点に、この和庭の完成度の高さが感じられます。 延べ段の色に合わせたサビ色の立水栓。 塀で庭は見違える。煤竹風の演出 庭の背景を形づくるもう1つの大切な要素が、塀の壁面です。一見すると、この庭は竹の遮蔽垣に囲まれているように見えますが、じつは煤竹風の板張り。既存のブロック塀を活かし、庭の背景となる内側にのみ表面に煤竹風の板(エバーアートボード建仁寺すす竹・タカショー)を張り付けています。 既存ブロック塀を生かして内側のみ板張りを施工。 もし背景がブロック塀のままであれば無機質で味気ない印象になってしまいますが、内側を煤竹風の板張りにすることで庭全体が和で統一され、緑が一段と映えます。仮にブロック塀を壊して本物の遮蔽垣を一から組むには高度な技術と時間、そして予算が必要になりますが、アートボードを用いることで工期やコストを抑えつつ、庭に十分な品格をもたらすことに成功しています。 アオダモの後ろにある電柱も、すだれを巻いて目立たないように工夫。 塀は庭にとって単なる境界ではなく、景観の背景を支える重要な要素。ここでも「実用と美観の両立」が巧みに図られているのです。 外に出て楽しむ、もうひとつの居間 次に「洋の庭」を見てみましょう。和の庭とほぼ同じ広さですが、和の庭が室内からの眺めを主眼にしているのに対し、洋の庭は外に出て楽しむ「アウトドアリビング」として設計されています。そのため床は歩きやすいピンコロ石の敷き詰めとし、腰掛けにもなる石積みオブジェを備えるなど、外で過ごす時間を心地よくする工夫が施されています。 扇形の床と石積みが演出するモダン空間 黒のピンコロ石は扇形に敷き詰めることで、広がりを演出しつつ、リズム感とモダンな雰囲気も生み出しています。高さを抑えた2組の石の小端積みは、オブジェのように庭のアクセントとなりながら、ベンチとしても使える実用性を兼ね備えています。 ピンコロの曲線に沿って配したモミジやコケと、直線的な石積みとの対比が美しく、和と洋が響き合う折衷的な空間になっています。 住宅窓際の足元は、沓脱石のみでなく、黒いピンコロの際をゴロタや植栽で自然風にデザイン。 ダークカラーの背景が引き立てる緑と高級感 「洋の庭」でも背景は既存ブロックを生かしながら、板張りを用いることでビジュアルの質を高めています。この庭は思い切ってマットなダークブラウンの塀に。濃い背景色が植栽や苔の緑を一層引き立て、庭全体に高級感とモダンな印象をもたらしています。単なる囲いを超えて、庭の舞台装置として大きな役割を果たしています(塀仕上げ:エバーアートボード ラスティコッパー:タカショー)。 緑の額縁に収まる星空 「洋の庭」は奥様の希望で「星を眺められる庭」として設計されました。庭の四隅に植栽を配置して、緑の額縁の中に夜空を切り取る工夫がされています。昼は青空が、夜は星々がその額縁の中に収まり、まるで1枚の風景画のよう。足元照明も配され、安心感とともに非日常のひとときを楽しめる空間です。 2つの庭が奏でる、異なる魅力 M邸の庭は、玄関を中心に左右でまったく異なる世界が広がります。室内からの眺めを主とした和の庭は、苔むした法面と石の存在感が生み出す静謐な空間。一方、戸外で過ごすことを目的にした洋の庭は、モダンな石敷きとベンチ、そして星空を楽しむ仕掛けが、アウトドアリビングとしての開放感を与えてくれます。 2つの庭は、用途も表情も異なりながら、共通して「石・緑・背景」の調和によって完成度を高めています。和と洋の異なる魅力がひとつの住宅に同居するMは、庭づくりの可能性を広げ、日常に豊かな変化をもたらす好例といえるでしょう。 設計施工:帝樹園 庭正 長橋正宇
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外構事例
【DIYガーデン実例】アウトドア派必見! 東京都内のこだわりDIYガーデンをご案内
機能満載のDIYテーブルでアウトドアライフが楽しめる空間に 今回ご紹介する中庭は、間口2間(約360cm)、奥行き2間ほどの正方形。三方を壁に囲まれたアルコーブ(壁面の一部をくぼませた空間)状の中庭は、残る1辺が隣家に面しているため、DIYで作った横板張りのデザインウォールを取り付けて目隠しにすることで、敷地外の背景や視線が気にならない、落ち着いて安らげる空間を作っています。 移動も簡単なキャスター付きDIYテーブル。 テーブルの天板をたたむと収納スペースが。 ガーデンでパッと目を引くのは、ストライプの天板が印象的なテーブルです。木肌色とこげ茶色に仕上げられたこちらは、キャリーワゴンに設置したDIYテーブル。天板を折りたたむと、内部にはアウトドアグッズが収納されており機能満載。キャスター付きなので移動も簡単! ダストボックスの蓋は100円ショップの「すのこ板」で制作。 幅広の板と細い板を交互に並べたおしゃれなデザイン。 テーブルには、あると何かと便利なダストボックスも備え付けられています。このダストボックスもDIYで一工夫。横板張りの蓋を取り付けて、テーブルと調和させつつ、すっきりとした見た目に仕上げています。ご夫婦をモデルにウサギとクマをデザインしたキャラクターシールがアクセント。 奥様デザインの夫婦キャラクターシール。 LEDテープをジョイントラックのフレームに巻いて、夕食などのグランピングも楽しめそう。 このキャリーワゴン内蔵のテーブルは、DIYのジョイントラックが取り付け可能。ラックにはスプーンやカップなどをかけられるようになっています。LEDテープを巻き付ければ、手軽にライトアップできて庭キャンも楽しめそう!! 飲み物用としてはもちろん、火にかけて料理も作れる多機能なシェラカップ。 通常、食事や飲み物にはお皿やコップ、鍋などいくつかの食器や調理器具が必要ですが、そんなちょっとした手間を解決してくれるのが、このシェラカップ(持ち手付きの金属製カップ)。料理や飲み物を入れて、お皿としてもコップとしても使え、さらに直接火にかけられるので調理器具としても役立つ万能ギア。波形の持ち手に合わせ、人差し指と薬指は前で、中指は手前にして持つと、量が多くてもしっかり握れて安定感抜群です。アウトドアライフを充実させてくれる必携アイテムですが、自宅で使ってもキャンプ気分を味わえること間違いなし! DIYのデザインフェンスで隣家との目隠しを 隣家側はラティスフェンスに。フェンスの一部には、隣家の給湯器からの熱を防ぐ断熱材が仕込まれている。 花鉢を置くための飾り棚。花に似合う愛らしい雰囲気の一角。 隣家との目隠しには、DIYでよく使われる1×4材(断面のサイズが19×89mmの木材)を使って手作りした目隠しフェンスを設置。DIYならではの雰囲気がある横板張りのフェンスは、花鉢を飾る棚を設け、より暮らしの中で使いやすくデザインしています。この棚は造作が難しい波形の板を使ったこだわりのデザイン。奥様のお気に入りの可愛らしいコーナーです。 文字にはアイアンペイントを施し、レトロ感を表現。 飾り棚の上に躍る「WEL★COME」の文字は、塗るだけで金属のような質感が出せるアイアンペイントで着彩。スポンジで叩いて塗ることで、経年変化のような程よい色ムラを演出しています。細部までこだわりがスゴイ!! くつろぎやすいガーデンファニチャー。 ガーデンには、身体を預けてくつろげるガーデンチェアと、足を乗せたり小テーブルとしても使えるオットマンも設えられています。こちらはDIYではありませんが、よく吟味されたイスは、座ってみるとなんとも心地よく、オットマンに足を乗せれば、さらにリラックスできる快適空間に。このオットマンは、本来は小さなイスですが、上面がしっかりしているので、ローテーブルのように小物やカップを置くのにも便利です。 アウトドア&DIYスペースとなる薪置き場 薪置き場の上にもテーブルを設置。 中庭の一角にはテーブルを取り付けた薪置き場が。テーブルには照明と、湯沸かし器がセットされたバイオストーブが置いてあります。このバイオストーブは、手元を照らせるライト付きで、燃料は小枝でもOK、なおかつ発電もできる優れモノ! キャンプにも非常時の備えにも使えると入手したそうです。薪置き場のテーブルは、普段はDIYの作業台。テーブルの後ろには、DIYで使うスタイロフォームが目に付かないように収納されていました。 手動折り畳みのシェードもDIYで 手動で開け閉めができるシェード。 ガーデンの上には、日差しやちょっとした風雨を遮るシェードが取り付けられています。なんと、このシェードもDIY作品の1つ。DIYで作られた手動シェードは初めて見ましたが、鉄パイプの表面を合成樹脂でコーティングしたイレクターパイプを使った2段のフレームで構成されており、強度抜群で、シェードの波形によって雨水が溜まることなく流せる工夫がされています。じつは、この庭の施主様は建築設計事務所の所長さんなのですが、知識と技術を活かしたつくりは、さすが! 樹木マークの飾り付き。 シェードシートの角には樹木の飾りがついていました。ワンポイントのデコレーションが可愛らしいですね。 ペットのためのDIY「ニャ~のトイレハウス」 足跡マークが可愛い愛猫のトイレハウス。 扉を開けるとトイレが。普段は見せない収納。 施主様のご厚意で、住宅のインテリアも見せていただくことに。お部屋の中にもアイデアとデザインが光るDIY作品が目白押しです。リビングに設置されていた愛猫のトイレハウスは、一見キャビネットのように見えますが、こちらもDIYで作ったもの。奥の扉を開けるとトイレが据え付けられていて、写真左側の出入り口からトイレに向かうまでの通路は猫砂落としになっていました。デザインの可愛いアクセントである足跡マークは穴抜きされていて、ハウスの中から室内を眺められるようになっています。 愛猫のレオナとミーナ。 DIYデコレーションでトイレも素敵な空間に 猫たちが遊ぶステッカーが可愛い。 よく見ると、カーテンレールにも猫モチーフの飾りが。 トイレの収納棚は、下部はレースのカーテンを掛けたトイレットペーパー置き場、上部はプリザーブドフラワーとランプシェードの飾り棚になっていて、壁には猫のシルエットのステッカーが貼られています。トイレットペーパー置き場は、たっぷり24ロールが収納でき、非常時用のストックスペースも兼ねています。カーテンにも猫の飾りがついています。 100円ショップの額縁2枚で作ったコンセントケース。なんと取っ手も100円ショップのレジンで作った肉球モチーフです。 ここで驚いたのは、飾られた小さな額縁。じつは、この額縁は100円ショップで販売されている商品を使って手作りしたコンセントケースなのです! 額縁の絵にも、黒猫や白猫たちが登場。隅々まで猫愛にあふれた“ニャー三昧”の素敵な空間ですね。 落ち着きとやすらぎの夜景の庭 日が落ち始めると、中庭もナイトシーンの装いに。シェードとフェンスに取り付けられた、少しレトロな雰囲気の照明に照らされて、リラックスタイムにぴったりの程よい明るさです。横板張りの目隠しフェンスに、植栽と鉢物のグリーンが、ナチュラルに馴染みます。 三方を壁に、そして隣家の玄関からの視線を遮る目隠しフェンスによって四方が囲まれた中庭は、落ち着きと安らぎが生まれます。さらに、できるだけガーデンテーブルに収納できる部分を作るなどの工夫をすることで、ごたごたしないすっきりしたデザインのガーデンになりました。 車もDIYリフォームでアウトドア仕様に! ブラウンのルノー カングーをDIYでリフォーム。 中庭ガーデンに登場するアウトドアグッズを見ても分かるとおり、施主様はアウトドア派。よくキャンプに出掛けるだけでなく、車の内部もDIYでライフスタイルに合わせたアウトドア仕様にリフォームしています。 上部は愛猫のゲージ、下部は収納スペースに。 キャンプギア用モールシステム。 バックボードにも猫デザインのシートが。 車内にはお出かけペットゲージスペースが設けられています。この車のリアゲートは両開きドアで、ここにキャンプギアを格納するためのモールシステムと、猫デザインの可愛らしいシート張りバックボードをDIYで取り付けました。モールシステムとは、等間隔で縫いつけられた丈夫なベルトにギアを取り付けるシステムのことで、さまざまな形のアイテムを自由に収納することができます。 収納スペースに隠された引き出し式のテーブルとカップホルダー。補強支柱が付いているので、重量物もOK! テーブルは流し台としても活用可能。 リアスペースの下部には、引き出し式のテーブルと物入れが作られています。このスペースは、キャンプなどの際には水栓・シンク・排水用タンクのユニットが設置できるキッチン流し台セットにも変身。じつはこのユニットも、100円ショップアイテムで手作り。収納ボックスを2段重ね、下段が排水槽となる仕組みです。 自分のスタイルにぴったり合わせられるDIYリフォームならではの、アウトドアアクティビティーに使いやすいシステムですね。 折り畳みテーブルの下にはキッチン道具収納ボックスを格納。後部座席には芝畳マットを敷いてくつろぎ空間に。 センターコンソールにセットしたDIYドリンクホルダーは取り出しても使用可能。使用時以外は蓋もできる。 後部座席には折り畳みテーブル、運転席脇にはガムやドリンク置き場となるホルダーがあるのですが、これもDIY作品。後部座席と助手席部分にはスタイロフォームを人工芝で覆った畳が敷かれ、身体を伸ばして休めるベッド代わりになります。なんと、折り畳みテーブルもベッドに変身するそうです! DIYで作ったギミック満載のこの車は、ご夫婦2人と猫たちの車中泊や避難用にと作り上げたそう。実際に、外気温がマイナス1℃の環境での車中泊も体験済みだといいます。 人工芝仕上げの畳をベッドに。畳は友人の畳屋さんの製品。 こだわりを詰め込んだDIYで、見ているだけでもワクワクする素敵なガーデンや車が出来上がります。「狭いところにも、こんな収納ができてしまうとは!」という驚きがいっぱいのDIYアイデアの数々。キャンプ道具の収納に困っている方、DIY好きの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね! DIYデザイン&造作:小川秀二(株式会社エニシ建築設計事務所・東京都杉並区阿佐谷南)
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外構事例
【外構デザイン実例】「ブラック×天然木」で魅せる庭づくり! 棚付きウォールの個性派ガーデンを拝見
住宅の顔・ファサードでひときわ目立つ波型鉄板の塀 住宅の前に立つと、まず目に飛び込んでくるのが、縦のラインが際立つ真っ黒な波型鉄板の塀です。基礎がグレー、塀はブラックの波型鉄板の素材を使った塀はインパクト抜群! 波型鉄板は、昭和の前半から半ば頃によく使われ、一般的には住宅よりも小屋や倉庫などに利用された建築資材です。そんな波型鉄板をあえてチョイスし、ブラックカラーにすることで、レトロ感を演出しつつもシックにまとめています。 ブラックの波型鉄板は、レトロなイメージを生かしつつモダンなデザインにもよく似合います。 レトロ感のある表札・ライト・ポストのカラーもブラックに揃えて。表札の「ブラック×木」のデザインは、庭全体に共通のコンセプト。 表札を照らす照明やインターホン付きの表札もレトロ感たっぷり。こうした小物も素材までこだわってコンセプトに合わせるのが、センスアップのポイントです。照明の傘やポストはブラック、表札はブラックに木質の額縁と、「ブラック×木」のカラーコーディネートは、これからご紹介するガーデンにも度々登場する、庭全体に共通するコンセプト。これで全体のまとまりが生まれますね。 自然木の天井がオシャレなアルコーブ ナチュラルな木の質感が落ち着くアルコーブ。 玄関前、右手にある扉が、塀に囲まれた庭へと続いています。その扉を開くと、見事な木質の庇天井が印象的なアルコーブスペースがありました。アルコーブとは、壁面の一部をくぼませた空間のこと。この住宅では、波型鉄板の塀と住宅壁面の間にアルコーブスペースが設けられています。 天井の格子により採光もバッチリ。日差しの強さも調節可能。 ここのアルコーブの庇天井は、全面を覆うのではなく、部屋の前は光が入る横格子状にしてあるのがユニーク。格子から差し込む光により、アルコーブ周辺のスペースが明るくなるように工夫されています。格子の“せい”(高さ)の具合で日差しの強弱を調整することもでき、低ければ日差しは強く、髙ければ日差しは弱くなります。裸電球を天井の端に取り付けてあるので、楽しい夜の演出もできますね。 ガーデンは「ブラック×天然木」の構造物が見どころ! 真っ先に目を引くのは、庭中央を横切る大きな構造物。 いよいよ、ブラック波型鉄板の塀で囲まれた中の庭を拝見! 3mもの高さの塀の内側は、柱と横板によってスタイリッシュかつ実用的な棚に。そして庭中央は、天然木の支柱に支えられた、中空に浮かぶフェンスのような横板貼りの構造物が横切ります。この“空中フェンス”は、ガーデンデザインの主役となるだけでなく、隣家の2階からの視線カットという機能的な役割もあります。 ユニーク&スタイリッシュな植物をディスプレイ 多肉植物など、ドライガーデンを好む植物が並ぶ棚。 塀の内側に設けられた棚は、お気に入りの植物のディスプレイスペース。横板の桟を同じ高さの位置に揃えて棚を設け、余裕を持って植物鉢を並べることで、モダンで整った印象を与える、植物を組み込んだ素敵なデザインです。 シャープな細長い葉、多肉質の丸い葉など、さまざまな形状の植物が並びます。植物に合わせた鉢選びも楽しみの一つ。 棚に並ぶ鉢は、多肉植物などドライガーデン向きの植物がほとんど。水やりなどのメンテナンスが簡単で扱いやすく、何よりフォルムの面白さが魅力。細長い葉や球形のようなものなど、カッコよくユニークな形に魅了されたコアなファンも多く、人気も高まっています。こうしたサボテンやアガベ、多肉植物、セダム類(メキシコマンネングサ他)などは、乾燥に強く自然の雨水のみで育つので、メンテナンスがラクです。皆さんも、ホームセンターやガーデンセンターに出向き、育てやすい植物を研究してみるのも楽しいですよ。鉢のデザインもさまざまあり、植物に合わせてコーディネートするのも楽しいひとときです。 足下に広がる青々とした芝生も、じつはメンテナンス不要の人工芝。 タイルテラスのガーデンファニチャーもシンプルデザインに ブラックの脚に、木質の天板やひじ掛けを持つガーデンファニチャーで統一感を。 住宅横にはタイルテラスがあり、くつろぎの時間を過ごせるスペースに。テラスに置かれたガーデンファニチャーは、ガーデンのほかの部分と同様に「ブラック×木」のコンビネーションで統一しています。スタイリッシュなブラックの素材に、温かみのある木製の天板やひじ掛けを持つテーブルや椅子を選ぶことで、庭全体のトータルコーディネートを感じます。 テラスに敷かれたベージュ色の60cm角タイルは、絶妙な色ムラのある色調が、ザラザラとした質感の素材と好相性。庭や住宅など全体ともよく調和します。ザラツキのある床なら、雨降りや掃除の水でタイルが濡れても滑りにくいので、いつでも安心して利用できます。愛嬌たっぷりで可愛いペットのトイプードルも、このスペースがお気に入りの様子。 ここがポイント! シックなデザインのテクニック モノトーンで構成されたデザインには、自然素材が意外とフィット。組み合わせると、落ちついたイメージでまとまります。 今回ご紹介した住宅事例では、ブラックをベースに、支柱や桟、棚、梁などを木の素材にしています。そして、ブラックの塀はフラットな面でなく、波型にしているところが重要なポイント。フラットな壁面は単調な仕上がりになりやすく、波型にすることで変化を生んでいます。また、今回のケースとは対照的に、塀をコンクリート色やホワイトにすれば、明るいすっきりしたイメージになりますよ。 このように、カラーコーディネートはお好み次第。素材の質感でもイメージがガラリと変わります。 ご自宅で趣味を生かした庭づくりを研究して楽しんでみてはいかがでしょうか? 設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司
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【リフォーム実例】気分も一新! ルーフバルコニーをシンプルモダンにリフォーム
ガレージ2階のルーフバルコニーをリフォーム ガレージの上が、今回ご紹介するルーフバルコニー。 今回は、神奈川県横浜市にある住宅のガーデンリフォーム実例をご紹介します。 舞台は、海辺のリゾート地にほど近い住宅街にある庭。この庭は、ガレージの2階にあるルーフバルコニーです。ルーフバルコニーとは、下の階の屋上に設けられたバルコニーのこと。リフォーム前は、細い水平ラインのフェンスで囲われたナチュラルイメージのバルコニーでした。 それでは、リフォームにより一新したルーフバルコニーをご案内しましょう。 エントランスを通ってルーフバルコニーへ 門かぶりの松の足元は玉砂利が敷かれたミニ和風ガーデン。 まずは門かぶりの松のある門扉をくぐって、玄関前へ。この松は樹齢50年ほどになり、親子2代に渡って管理しているとのこと。ちなみに「門かぶりの松」とは、門の上に水平に枝が伸びた松のことです。松は神が宿る神聖な樹木とされ、「神を祀る」の「祀る(まつる)」の語源ともいわれています。常緑で冬になっても枯れない縁起のよい樹木とされ、お正月では門松などの飾りとしても親しまれていますね。 門扉の内側から伸びる松の足元には和風のミニ庭園が設えられ、洋風なアプローチとともに和洋折衷のスタイルが楽しめます。 そして、住宅のエントランス扉の脇に、ホワイトカラーのシンプルな手すり付きの階段がありました。ここが、リフォームされたバルコニーガーデンへの入り口です。 壁面と好対照な真っ白な階段が、ルーフバルコニーへの入り口。 ナチュラルからシンプルモダンへイメージ一新! Before:リフォーム前はウッドデッキのナチュラルなガーデン。 After:柿の木の絶妙なフォルムが生きるホワイトガーデン。グレーの床に要素を絞った植物使いがモダンな印象。 ホワイトカラーの階段を上がり、門扉を開けると、目の前に広がるのは、ホワイトの塀に囲まれたシンプルなリゾート風ガーデン! 真っ白な塀に床は明るいグレーの人工芝、白を基調とするガーデンに、樹木の描く影がくっきりと落ち、モダンでアーティスティックな風景に。トラベルガイドのパンフレットに出てきそうな印象的な演出ですね。大きな柿の木は、リフォーム前からの既存樹木を切らずに生かしたものです。 リフォーム以前のナチュラルなウッドデッキの庭から、シンプルモダンなルーフバルコニーへと見事な変貌を遂げました。 パーゴラとベンチで爽やかなリゾートイメージ Before:ウッドデッキとベンチのスペースが…… After:パーゴラとベンチがあるホワイトベースの空間へ! Before:フェンス際のプランターは…… After:花壇の上にタイルを張ってシンプルなベンチに。 写真のスペースは、リフォーム以前は、ウッドデッキの床に段差を設け、腰掛けられるベンチとして利用していた場所。また、フェンス手前には植栽マスがあり、ヤシやアガベなどの植物が植えられていました。 リフォーム後には、ホワイトのパーゴラが爽やかな空間へと生まれ変わりました。床には60cm角の大きめのタイルを張り、高級感を演出。元あった植栽マスの上には周囲よりもやや濃色のタイルを張り、ベンチにリフォームしています。ベンチと床のタイル目地を揃えているところが、キレイに見えるポイントですね。 パーゴラには小さな明かりを灯す豆球を取り付けています。パーゴラと豆球が床に規則正しく落とす影までもガーデンのデザインに組み込み、一層魅力的な空間になっています。 パーゴラの豆球の影が作る模様も、リズミカルで軽やかなデザインの一部。 シンプルなアイテムでオシャレに ホワイトの板塀に浮かぶアイテムたち。 シルバー色のマリンライト。 シンプルな水栓。 愛犬のリード掛け。 注目したいのは、ホワイトベースの板塀に、いくつかのアイテムを施しているところ。塀上部には、最近は特に人気のあるマリンライト。真鍮色が一般的ですが、ここではよりクリーンなシルバーを採用しています。水洗の蛇口もレトロでシンプルなもの。もう1つは、一見取っ手のようですが、これは愛犬のリードをかけるためのフックです。ゆとりをもって板塀全体を使うデザインがオシャレ! これらのアイテムの色彩は、すべてシルバーで統一しているところがポイント。ホワイトベースのモノトーンな板塀が生きる、シンプルモダンの必殺技です。 雑草が生えにくいよう防草シートの上に人工芝を敷いて。 また、ルーフバルコニーのシンボルツリーである柿の木の足元も、淡いグレーの人工芝で、徹底的にシンプルさにこだわっています。この人工芝の下には防草シートが敷かれていて、雑草が生えにくくなっています。こんな一工夫でも庭のお手入れの手間を減らすことができますよ。 タイルテラスで気をつけること 掃き出し窓の敷居には…… 敷居と平行にグレーチングが。 ルーフバルコニーと住宅は、掃き出し窓でシームレスにつながっています。この掃き出し窓の敷居に注目。よく見ると、敷居に沿ってオシャレなグレーチング(金属製の格子蓋)がついていました。住宅基礎の上には床下換気口がついていますが、グレーチングがないとテラスの下地のコンクリートで換気口が埋まってしまいますよね。グレーチングを設置して空気の通り道をつくれば、換気口の通風ができるようになり、また室内のリビングとタイルテラスを段差なくフラットに結ぶことができます。 まとめ 最近は、住宅と共に、庭をリフォームする事例も増えてきています。今回は、経年変化で古くなったウッドデッキから、ホワイトベースのシンプルなタイルテラスに変身した実例をご紹介しました。ナチュラルなウッドで構成されたデザインから、全く印象の異なるホワイトベースのタイルテラスやウォールにすることで、生活も心機一転するきっかけになります。 このように、住まう方の年齢や趣味などでライフスタイルが変化するように、または時代の流行によっても、庭のデザインは大きく変わっていきます。 皆さんも庭にも目を向け、変化のある心地よいライフスタイルをデザインしてみてはいかがでしょうか? 気持ちも新しくなり、楽しく明るい人生が送れることでしょう! 設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司
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【海辺の住宅実例】海と空を間近に望むラグジュアリーな別荘の内外をたっぷりご案内
トンネルを抜けると、そこには青い空と紺色の別荘 トンネルを抜けると、青空を背景に目の前に現れる紺色の別荘が、今回ご紹介する住宅。じつはその建設には、私も少しだけ関わらせていただきました。 2024年の4月初旬に携帯電話が鳴り、「三浦半島に別荘を建築するのですが、工務店の大工さんに口頭で説明してもうまく伝わらないので、大工さんに分かるように外回りや室内の絵を描いてほしい」との相談を受けました。それが、こちらの住宅。施主様は大変熱心で、住宅の外部や内部の仕上げ材から家具まで自ら調べあげて理解が深く、大変素晴らしい別荘が誕生しました。 今回は、そんなこだわりの詰まった別荘を、外観から内装までたっぷりご案内します。 紺色に白のラインがクリーンな外観 別荘の外壁は、木目調ラップサイディング。細長い板材を重ね張りしていくラップサイディングでは、壁に段差が生まれ、立体感や陰影を楽しめます。ビビッドな紺色の外壁に対し、屋根の破風(はふ)や鼻隠し(はなかくし)、サッシは真っ白で、その対比が鮮やかですね。ベースの色に対し、白いラインを入れるとシャープなイメージになり、清潔感が生まれます。今回のような紺色ベースにホワイトラインは、リゾート感の演出にぴったりです。 ちなみに破風は雨樋をつけない屋根側面を、鼻隠しは屋根の下にある垂木(たるき)の切り口を隠す部材のこと。 別荘の背景は緑に覆われ、空気が美味しく気持ちのよい環境です。 高台にある別荘。深い緑を背景に、紺色にホワイトラインが引き立つ外観です。 エントランスは赤いポストがワンポイント 緑に囲まれた爽やかなエントランス。 赤い宅配ボックス付きポストと、真っ赤なポインセチアがおしゃれ。 階段を上ると、紺色の外壁に映える白い玄関ドアがあります。その脇には観葉植物ドラセナ・コンシンネの鉢植えと、赤い宅配ボックス付きポストが。ポストの赤と色を合わせたポインセチアを添えたワンシーンも素敵ですね。 海で楽しんだ後はヘッドの大きなシャワーでさっぱりと。 エントランスの奥には外壁がくぼんだスペースがあります。エントランスからアクセスしやすいこの場所には、シャワーヘッドのついた水栓を設置。クルーザーに乗ったり、海で楽しんだ後は、建物内に入る前にシャワーを浴びることができて便利です。 住宅内へ! ささら桁階段のあるエントランスホール 側板や蹴上がなく、デザイン性の高いささら桁階段。踏板は天井と揃えて木製で。 それでは、いよいよ玄関ホールに入ってみましょう。壁には長い角を伸ばす真っ白なシカのオブジェが。そして、ホールが広く明るく見えるように、シースルーですっきりとしたささら桁階段を設置しています。階段の上部はロフト収納スペース。ヒノキの天井と、階段の踏み板の色を合わせて統一感を演出しています。 開放感あふれるリビング・ダイニング・キッチン キッチンの面材は紺色で、外壁のラップサイディングとお揃いに。 リビング・ダイニング・キッチンと、ウッドデッキの向こうの海や空が一体になる、開放感あふれる心地よい居住スペース。 階段の左手のドアを開けた向こうは、広々としたLDK(リビング・ダイニング・キッチン)スペースです。屋根の勾配に合わせて斜めになった勾配天井が、オフホワイトにまとめた壁面とともに、開放感のあるリラックスした雰囲気。キッチンは特別に要望し、外壁と同じ紺色に揃えたこだわりカラーコーディネート。壁際の長いI型とアイランドキッチンで構成されています。 天井にはプロペラファン、梁にはレール付きスポットライトを設置。 大きなプロペラファンが取り付けられた板張りの勾配天井は、見事なヒノキの梁をむき出しにして、高級感を演出。梁の下にはレール付きのスポットライトを設置していますが、その一部はじつは音響のスピーカー。スポットライトと同じ形をしているのがさりげなく、おしゃれですね。 海を望む窓の横に据えられた薪ストーブ。 石張りの壁と黒いストーブの、シックで絶妙なコントラスト。 南向きに開口部が広い折れ戸の掃き出し窓があり、部屋の隅にはシンプルでスッキリしたデザインの薪ストーブが設置されています。薪ストーブの熱を遮熱する石張りの壁には、ストーブより少し明るめの色の石を採用。微妙な石のテクスチャーが背景となり、主役の黒い薪ストーブを引き立たせています。 くつろげる最高のリゾート! ジャグジーが埋め込まれたこだわりのウッドデッキ 大きなパラソルの背景は、視界いっぱいに広がる海と空。 ウッドデッキに埋め込まれたジャグジー。 全開口の窓に切り取られた海と空の風景は、まるで刻々と変化する大きな額縁の絵のようです。窓から屋外へと結ぶウッドデッキは、室内の床と高さをフラットに揃えたことで、外周のフェンスが低く見え、海とウッドデッキの一体感が抜群! ウッドデッキにはパーゴラを設置し、さらにその下には夏の暑い日差しもしのいでくれる大きなパラソルを据えて、贅沢なくつろぎ空間が出来上がりました。 この空間のハイライトは、ウッドデッキに埋め込まれた純白のジャグジー。ジャグジーからの海の眺めも最高です。脇役のソテツが、リゾートの雰囲気を醸しながら一層景色を引き立てます。 ジャグジーの脇役は、リゾート感があり幸運を呼ぶといわれるソテツ。 ちなみに風水では、ソテツは細くとがった葉が邪気を払い、よい気を呼び入れるといわれています。また花は黄金色で、金運を呼ぶのだとか。ただしソテツには毒性があるので、赤ちゃんなどが誤って口にしないように注意しましょう。 くつろぎのリクライニングチェア。 ジャグジーの横にはリクライニングチェアが。高さが低くデッキに近いほどくつろぎや安らぎが生まれやすいため、角度を調整して身体をゆったりと伸ばせるリクライニングチェアは、ラグジュアリーなアウトドアのための最高のガーデンファニチャーです。 シンプルで移動が簡単なピザ窯。 このウッドデッキにはピザ窯も用意されており、本格的な美味しいピザが楽しめます。選んだのは、移動がラクな小ぶりの窯。取材前日にも、知人のイタリアンシェフなどの仲間が集まり、シェフが腕を振るった窯焼きの出来立てピザとワインで盛り上がったのだそう。ステキなアウトドアライフを満喫していますね! バレルサウナと水風呂のリラクゼーションスペース 人気のバレルサウナも。 サウナの後は、海を眺められる水風呂へ。 建物の裏手に向かうと、ただいま大人気のバレルサウナがあり、手前には立水栓付きの水風呂の桶がありました。ここからも海が見えるよう、水風呂の配置が工夫されていることがよく分かります。 とっておきの風景がもう1つ。施主様から「屋根に上ってみませんか?」と誘われ、ハシゴをかけて上ってみると……海が広く見え、鳥にでもなったかのような何ともいえない景色です。ストレスも解消されそうですね! 屋根に上ると真っ青な海が一層大きく見えます。 海が眺められるバスルームや機能的なトイレ 広くゆったりとしたバスルーム。 バスルームの窓からも海が。 最後に、バスルームも拝見。扉をあけると大きな鏡があり、浴槽は十和田石、浴槽の四方にはヒノキの板を張って、高級感のあるつくりです。十和田石の浴槽は、お湯を張ると水の色がグリーンに見え、温泉気分を味わえる仕掛けつき。参考までに、十和田石の浴槽は滑りにくく、しっとりした肌触りが特徴です。奇跡的に酸化されずに火山灰に閉じ込められたことで、緑色凝灰岩になったためにグリーンに見えるのだそうです。 こちらのバスルームからも、窓越しに海の眺めが楽しめます。 トイレは機能性がある壁材がポイント。 そして、トイレも拝見! 一見なんの変哲もないトイレなのですが、この壁面には、LIXILのエコカラットという壁材を使用。これは漆喰(しっくい)と同様に、ニオイ吸着効果がある壁材で、トイレに限らず、キッチンやお部屋など、あらゆるところに使用できます。この壁選び一つとっても、細やかな配慮が行き届いていることが分かりますね。 最後に… 今回ご紹介した、施主様がこだわり抜いた別荘。私自身も、建てる前からのお付き合いができたことは大変勉強になりました。大工さんも臨機応変に対応できる腕のよい職人さんで、在来工法のよさも体験できました。 取材前日に開催されたピザパーティーには、カマキリさんも参加していたようです。ナチュラルなライフスタイルは、心身ともに癒やされ、本来の人間の生き方を思い出させてくれますね。 皆さんも、ぜひ今年は自然と接する時間を作り、健康な毎日を送る余裕のあるライフスタイルを始めていきましょう! プロデュース:大朝毅施工:有限会社三和工務店 渡辺三郎
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【住宅実例】夜景シリーズVol.3 さながら高級リゾート!? バレルサウナのあるくつろぎの家を拝見!
クローズスタイルの豪華なファサード 長いアーチが目を引くモダンなファサード。 今回ご紹介するのは、千葉県印西市にある、敷地の周囲を塀で囲ったクローズ外構スタイルの住宅事例です。 こちらの住宅の顔であるファサードは、ガレージドアや塀などソリッドな構造物で構築された、リゾートホテルのような広々とした高級感あふれるつくり。変形敷地に建てられているため、門袖や塀は道路と平行ですが、住宅はその正面ではなく、右斜め後方にあるのがユニークです。 敷地全体を囲む高さ2mほどの塀は、明るい色の自然石を積んだもの。石を割ったテクスチャをそのまま生かした割肌仕上げで、広い面積であっても単調さを感じさせません。濃色の門扉の脇にある門袖は、腰までを石積みにし、黒いボーダーを挟んで上部はマットな白を組み合わせています。このデザインを反復するかのように、隣の塀はマットな白に黒い笠木のボーダーでシンプルに。門扉から離れるにしたがって淡い色へとフェードアウトするカラーコーディネートが、一層門扉まわりを強調してくれます。 そして、ともすれば漫然としがちな間口の広いファサードを、ぐっと引き締めるのがアーチの存在。焦げ茶色のアーチが、角と直線が際立つ都会的なデザインで全体をまとめ、印象的なファサードを作り出しています。 シンボルツリーの常緑ヤマボウシが植わる植栽スペース。下草には斑入りヤブランを。 植栽の地面は、斑入りヤブランと小石ですっきりとカバー。 アーチの足元には、塀と同じく割肌仕上げの天然石を積んだ植栽スペースが。シンボルツリーである常緑ヤマボウシに、下草の斑入りヤブランと自然石をさりげなく並べ、土を見せずに清潔感があるシンプルモダンな植栽が、ファサード全体の高級感にフィットしています。 ヤマボウシは、里山のような雰囲気が味わえる、日本に自生する雑木です。上品な白い花や食用にもできる実をつけ、年間を通して花、実、葉の様子を楽しむことができるため、シンボルツリーとして人気の高い樹種。よく見られる落葉性のヤマボウシのほかに、こちらの庭でも植栽されている常緑ヤマボウシがあり、常緑種は落葉種に比べて少し成長が遅く樹高も低めという特徴があります。コンパクトにまとまりやすいので個人邸の庭でも扱いやすく、また落ち葉掃除の手間もかからないというメリットから、庭木におすすめの種類です。 ゆったりとくつろげるアウトドアリビング 門扉を抜けると目に入る、周囲から一段くぼんだアルコーブになったエントランス。 開放感がありながら、ゆったりと落ち着けるアウトドアリビング。 門扉を開くと、左手に広々とした駐車場があり、右手正面には住宅のエントランスが。住宅方面へと足を進めると、ラグジュアリーなアウトドアリビングが現れます。アウトドアリビングとは、室内のリビングとつながるようにテラスを設けた、屋外のリビングのような空間です。セカンドリビングと呼んだほうが分かりやすいかもしれませんね。通常シェードや屋根を設置するため、強い日差しやちょっとした雨でも大丈夫。屋外用のソファやテーブルを置けば、ブランチやコーヒーブレイクを楽しむなど、くつろぎのひとときを過ごすことができます。 こちらの住宅のアウトドアリビングも、ゆったりとくつろげそうな屋外用のソファやベンチ、クッションに、清潔感のあるローテーブルが据えられ、家でのリラックス時間を満喫できそう。ベンチの脇にはシンプルな四角いボウルの立水栓が設置されていました。浅めの四角いボウルがシャープでおしゃれなデザインです。屋外に設置されているので、多少水がはねたりこぼれても気になりませんね。 モダンでスタイリッシュな立水栓。 気持ちのよいバレルサウナで至福のおうち時間 敷地奥へと続く、サイドヤードの飛び石の小道。 アウトドアリビングからさらに奥へと進んでみましょう。住宅の横を抜ける、ベージュの砂利敷きに飛び石を配した小道を通って、敷地の奥までたどり着くと、ビックリ! 板張りの塀でしっかりと囲まれた中に、バレルサウナがありました。勝手口からもアクセスでき、落ち着ける丁度よい広さのスペースです。 勝手口の前にバレルサウナのあるくつろぎスペース。撮影時は屋根がありませんでしたが、現在は屋根をつけてさらに落ち着けるスペースになっているそう。 バレルサウナは樽(barrel)のような円筒形の形状をしたサウナで、フィンランドが発祥といわれています。この樽は通常より強度があり、変形しにくいのが特徴で、熱を均一に保つことに優れています。ロウリュといって、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させることで、サウナ室内の湿度や体感温度を上げるのが、フィンランド式のサウナ入浴方法。発汗を促し、呼吸がしやすくなるので、ドライサウナで感じる息苦しさが軽減されます。サウナストーンに水をかけるときは、真上からゆっくりかけて少しずつ体感温度を上げるよう心がけましょう。 ちなみに、ヤードポンド法による体積を表す単位バレルの語源は、このバレルサウナと同じ「樽」。樽が液体を詰める用途で使われることに由来します。証券取引で原油の単位としても、よく聞かれますね。 ホテルアプローチのようなライティングで夜を彩る 明かりが灯ったファサードは、リゾートホテルの入り口のような贅沢さ。 夕方、周囲が暗くなってくると、アーチのフレームからもれる光のラインや、右手のシンボルツリーの常緑ヤマボウシを照らすアッパーライト、門袖のライン状のライティングなど、温かみのある色合いの光がファサードを照らし出し、一層洗練されたゴージャスな雰囲気に。ファサード回りの明色の床や門袖が、ライティングに明るく浮き出るように映えて、荘厳さまで感じます。 *ライティング商品のご紹介アーチは、タカショー・ホームヤードシステム「エバースクリーン」フレームライティングフェイス表札を照らすボーダー状のライト:タカショー・レターバーライト 遠近法を利用したデザインとライティングのポイント アーチを浮かび上がらせる、クールなスリット状のLEDライティング。 今回ご紹介した住宅事例では、変形敷地だったこともあり、ファサードの門袖や塀は道路と平行に配置されていますが、住宅は斜め方向に設置されています。この配置によって、遠近法により奥行き感が増幅され、ゆったりと豪華な雰囲気を生み出します。 門まわりのアーチはフレーム効果で間口の広さを強調するとともに、高級感のあるデザインのアクセントに。門袖の横ボーダー状の照明は、表札の文字を照らし出すだけでなく、おしゃれな夜景を演出しています。 床や塀の素材を光沢のある仕上げにすれば、ライトの反射も楽しむことができます。一方マットな素材では、灯りの映り込みはありませんが、少しつやのある仕上げにすることで、ハレーションによる幻想的な世界観を表現もできます。ただし、アプローチまわりの床材を、きれいに磨き上げた光沢のある本磨きにすると、雨天時では滑って転ぶこともあるので注意が必要。磨き具合はホームセンターやショールームに出向き、実際に自分の目で見て研究してみましょう。もちろんライティングも実際に見てみることが大切です! このような塀や建物の配置や、さまざまなライティング効果を参考にして、ステキなファサードを創造してみてはいかがでしょうか? 設計施工 株式会社Office Hanyuda ~Protect Garden~ 羽生田新悟
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外構事例
【住宅実例】夜景シリーズVol.2 シンプルで飽きのこない、大工さんが暮らす家と庭を拝見!
ファサードはコンクリート打ち放しと工夫された砕石のレイアウトで コンクリート打ち放しに砕石のスリットを入れた、シンプルで飽きのこないデザイン。 道路に向けて続くボーダータイルと砕石のコラボがオシャレ。 建築物を正面から見た際のデザインで、住宅の顔であるファサード。街でもよく見かけるのは、床面がコンクリートの打ちっ放し仕上げだけの住宅です。一方、今回ご紹介する住宅は、そんなシンプルなコンクリート打ち放し仕上げに一工夫が施された、スタイリッシュなファサード。 コンクリート打ち放しの床をいくつかに分割し、間に砕石を詰めデザイン的に仕上げています。道路際から1mほどの場所はコンクリートと砕石を交互に敷いたボーダーデザインとし、玄関までのアプローチには植栽マスを設けてリズミカルな動きを出しつつ、樹木を玄関ドアのソフトな目隠しとして機能させています。ほかではなかなか見かけない面白い構成ですね。また、エントランスポーチと階段にはグレーのタイルを使用し、白一色のコンクリートや砕石主体の色彩を引き締めることで、ファサードをより強調しています。 左右の隣地との境界を区切る塀は、一部を細い縦格子とし、単調さを防いでナチュラルな雰囲気を演出しています。 ゴロタ石と植栽のコラボで和モダンに シンボルツリーのシマトネリコの足元は、ゴロタ石と砕石ですっきりと。 アオハダと足元にもゴロタ石の花壇が。 エントランスドアの手前に配されたシマトネリコと、住宅外壁横に植えられたアオハダの植栽マスには清潔感のある白い砕石を敷き、株元にはこぶし大ほどの大きめでゴロゴロとしたゴロタ石が並びます。花壇の周囲に立ち上がりをつけ、グラウンドカバーを植えるケースも多いですが、このようなゴロタ石と砕石の組み合わせは、スマートで和モダンなイメージになりますね。アプローチにはシンボルツリーの植栽に加えてもう1カ所植栽スペースを設け、こちらはツリバナの足元を覆うグラウンドカバーとしてギボウシやヒューケラ、ヒイラギナンテンなどを並べ、和モダンを強調しています。 エントランス前の花壇には斑入りギボウシやえんじ色のヒューケラなどのカラーリーフを植栽。葉を生かしたキリッとした植栽はスタイリッシュな外構デザインによく似合い、1年中楽しめます。 シンボルツリーのシマトネリコは常緑樹ですが、落葉樹のような枝ぶりと、小ぶりな葉が風にそよぐ姿がステキな庭木です。エントランスに植えるシンボルツリーは、見た目とともに、メンテナンスがどのくらい必要になるかが重要なポイント。「落ち葉」は意外にも近隣トラブルの原因になる場合があります。その点、常緑のシマトネリコは安心ですが、成長が早いので、春から初夏または秋には剪定をおすすめします。真冬は休眠期に入りますが、寒さに弱いため、剪定をすると枯れることもあるので避けたほうがよいでしょう。 ダイニングキッチンとテラスを一体に 一体感のあるダイニングキッチンと屋外テラス。 施主様のご厚意により、室内も拝見することができました。大工さんだという施主様らしく、随所に暮らしの工夫がちりばめられたディテールは必見! エントランスから廊下を通りすぎると、間仕切りのない広いスペースのLDK(リビング・ダイニング・キッチン)がありました。しかもこの部屋は、屋外テラスとつながっているので、より一層広々と開放感があります。よく見るとLDKとテラスの床はフラットにしてあり、全体の一体感を高めています。段差がないので、車いす歩行や足の悪い方にも歩きやすいですね。 ダイニングキッチンと屋外テラスの床は、段差がなくフラットにつながります。 シンプルで使い勝手のよいプライベートテラス ダイニングから見た屋外テラス。 屋外テラスはホワイトベースのタイルに木製の目隠しフェンスで構成。 それではテラスに出てみましょう! マットな質感のホワイトタイルの床や壁を、ダークブラウンの木製フェンスが引き締めます。横板張りのフェンスには、硬質で耐久性が高いウリン材をチョイス。フェンスの高さは2m程度あり、隣家の視線を気にせず安心してくつろげます。また、テラスのコーナー部分には、シャワーヘッド付きの立水栓が設置されていました。シャワーヘッドがあると、ペットがテラスで遊んだ後の足洗い場としても、お掃除の際にも便利ですね。立水栓やシャワーヘッドは、窓回りのサッシと同じシルバーで統一されています。 シャワーヘッドつきの立水栓。 大工さんならでは! 埋め込みのバスルーム・スケール 洗面所の床に埋め込まれたバスルーム・スケール。 バスルームに向かう洗面所に入ってみると、床に埋め込まれたバスルーム・スケール(ヘルスメーター)が。これは驚き! 床とフラットになっているので場所をとらず、子どもが足を引っかけてケガをすることもありません。いちいち取り出さなくてもいつでも計測できるので、バスに入る前には必ず体重を計る習慣が身に付きます。このアイデア、さすが大工さんの家ですね! ちなみにヘルスメーターは和声英語で、正確にはバスルーム・スケールと呼ぶそうです。 バスルームからはテラスを眺められる。 バスルームには、テラスを眺められる窓がありました。外の景色が楽しめる一方で、テラスからは室内が見えない工夫も施されています。 配慮が行き届いたワンコスペース 愛犬のフードボウルと水入れを置く、可愛らしいマット。 壁に囲まれる落ち着いたスペースにあるペット用トイレ。 テラスにつながるダイニングキッチンの隅、食器収納棚と観葉植物の間には、愛犬のためのフードボウルと水入れがありました。床に敷かれたランチョンマットが、ワンコの顔のようなシルエットで可愛らしいですね。廊下の奥に設置されたペット用トイレは、両側を壁に囲まれた物入れの下にあるので、落ち着いて用を足すことができるはず。ホントにワンコ思いの施主様で、幸せですワン! 植栽シルエットでステキな夜景に 夕暮れ時のファサード。いよいよ日が暮れてきました。 エントランスの明かりが格調高い佇まいを演出。 この住宅のファサードは、ライトアップされた夜景も見所です。 周辺が薄暗くなってくると、奥まったエントランスドア周辺が、明るく存在感を増してきます。壁の横に植栽されたアオハダは、チラチラとほの明るくライトアップされ美しい影を壁に描き出します。壁面から少し浮かせて立体感を持たせた、筆記体の横文字がオシャレな門袖の表札も、スリット状のライトに照らされてよりシックな雰囲気になります。 ライトに浮かび上がる表札の筆記体もオシャレ。 白い壁に映るアオハダのシャドウシルエットが幻想的です。 そして、周囲が真っ暗になると、アッパーライトで照らされた、住宅壁面に映る放射状のアオハダのシャドウシルエットが幻想的なシーンを生みます。エントランス手前のゴロタ石と植栽は、低めのポールライトで控えめに照らし、エントランスからこぼれる光の効果で、料亭のような落ち着いたアプローチが演出されています。 料亭のような灯りがシックなアプローチ。 まとめ ホワイトベースのモノトーン構成のデザインは、使う素材次第で、エクステリアのイメージが全く変わってきます。今回ご紹介した住宅のように、打ちっ放しコンクリートの床は、スリット部分に砕石を入れた目地や、ボーダータイルと砕石の組み合わせでオシャレに演出できます。植栽の足元をカバーするゴロタ石は、並べ方次第で、ナチュラルな花壇や景石にもなります。 植栽は、日本の在来種であるアオハダやツリバナを配植して和モダンイメージを強調。在来種とは、昔から日本の自然の中で生きてきたもので、その地域に本来自生している植物です。日本の土地柄や気候に合った植物を植えることで、管理に手がかからないだけでなく生態系も成り立ち、いっそう自然風に近づいていきます。 モノトーン構成のシンプルデザインは、ゴロタ石や砕石、在来種の植栽で、和風や和モダンなイメージになります。ほんのりと柔らかい光や庭木のシャドウシルエットを効果的に取り入れれば、高級感のある印象的な夜景を演出できます。 皆さんも、いろいろな素材を工夫して、素敵なファサードを創造してみてくださいね。 設計施工:ヘブンズガーデン 宮元健太
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【住宅実例】夜景シリーズVol.1 夜景もステキ! ライティングが映えるエレガントな住宅事例をご案内
住宅の高級感にフィットする、重厚な石張りのエクステリアデザイン 住宅外壁とエクステリアは石張りで統一。デザインウォールと門袖(もんそで)にそれぞれテクスチャーの異なる石を用いることで、変化を持たせています。 住宅の一部を格調高い石張りで仕上げた外観デザインに合わせて、エクステリアもさまざまな工夫で高級感を演出。窓の目隠しとなる位置に設えたデザインウォールは、住宅の外壁に合わせたマットな質感のシンプルな石目調タイル張りにし、統一感を演出しています。一方、エントランスの左右を対称に飾るよう据えた門袖は、少しラフな印象の石を用いたランダムな小端積み(こばづみ)。テクスチャーを変えることで、ファサードに個性が生まれています。 小端積みとは、レンガや石などを、小口(細長い厚み部分)を見せるように重ねて積み上げること。花壇や門袖など、横方向のラインを強調したいときに使うと効果的な手法です。 デザインウォールを背景にしたドライガーデン ファサードは石の小端積みとマットな石目調タイル張りで、印象に変化をつけて。 デザインウォール部分に注目してみましょう。デザインウォールのシンプルな石目調タイル張りに対し、小端積みで構成された門袖と花壇の立ち上がりのゴツゴツとした立体感が好対照なデザインです。また、門袖はグレーを基調に暖色の色ムラが入る素材を用い、デザインウォールと花壇はワントーン明るいグレーに統一。3つの要素にそれぞれ共通項を持たせてまとめると同時に、門袖が独立した存在感を放っています。デザインウォールの中央に設けた細長い窓は、デザイン性を高めるとともに、内側への風通しとしても機能しています。 アガベやニューサイランなどが育つドライガーデン。 花壇には、大株のアガベやニューサイラン、マホニア・コンフューサなどを植栽。植物の株元は細かい白い砕石を敷くことで土を隠し、美観を向上させるとともに雑草を生えにくくしています。品のある石張りの住宅とデザインウォールに似合うドライガーデンです。 ドライガーデンとは、乾燥を好む植物で統一したガーデンスタイルのこと。水はけのよい環境を整えてやれば、自然の雨水程度で育つので、頻繁な水やりの必要がありません。ドライガーデンで特に人気の高いアガベは、メキシコを中心に中央アメリカやアメリカ南部に自生する植物です。そのほか、サボテンや多肉植物なども人気の素材です。 ウォールに隠された窓前ガーデン デザインウォールの裏手に広がるすっきりした庭。 石目調タイルのデザインウォールの裏側に回ると、コンパクトな庭がありました。こちらは雑草の心配や水やりがいらない、ローメンテナンスな人工芝を取り入れたガーデンです。 門袖の後ろには黒い木箱が据えられていますが、こちらはなんと、ゴミの戸別収集用ボックス。傷みにくいハードウッドを使い、マットなペイントで仕上げたハンドメイド品です。ハードウッドとは赤道付近に分布する広葉樹の木材で、繊維が密になっているため硬くて重量があり、虫害や腐食に強く丈夫なのが特徴。シックなブラックの中に輝く蝶番や取っ手、止め金具のシルバーが、さりげなくエレガントさを感じさせるアイテムです。 ゴミをおしゃれに隠すハンドメイドのボックス。 メンテナンスが楽な窓前ガーデン。 窓前のローメンテナンスガーデンには、ツリバナが植栽されています。ツリバナは日本に自生している在来種で、環境になじみ手を掛けなくても育てやすい庭木です。ツリバナという名前の由来は、5月から6月の開花期に、枝から吊り下げられたように小さな花がたくさん咲くことから。9月から11月には赤い実がなり、紅葉とともに秋の風情を楽しむことができます。 秋に実る真っ赤な可愛らしいツリバナの実。 ヨーロピアンな門袖まわりと玄関アプローチ サイコロ状のピンコロタイルを敷いたアプローチ。 もう一方の門袖には、ポストや表札などの機能を持たせています。この門袖の後ろは、玄関へと続くアプローチになっています。舗装のピンコロタイルはヨーロピアンな石畳風で、自然な目地が柔らかな雰囲気。それをブラックの門扉で引き締め、高級感を出しています。 タイルやエレガントな飾りでヨーロピアン風の演出。 門扉をくぐり、玄関に向かうアプローチは、施主様の希望でアールヌーボー調のデコレーションが施され、まるでパリの地下鉄の出入り口のよう。舗装のピンコロタイルがよく似合います。 玄関上のアールヌーボー調デコレーション。 夜景が生きるデザインウォールとアプローチ 夜の玄関アプローチ。 デザインウォールを優しく照らすライティング。 夜景もご覧のように、とてもおしゃれな雰囲気。デザインウォールの中央にあけた細長い窓から室内の灯りが漏れ、合わせて花壇に設えた間接照明が植物のシルエットを浮かび上がらせスタイリッシュ。玄関アプローチは電球で足元を明るく照らし、街灯に照らされたヨーロッパの街角のような雰囲気に。 ライティングは幻想的な世界を演出できる手法 ライティングは、一般には防犯を目的とすることが多いと思いますが、幻想的な夜景を演出する効果もあります。夜道の歩行者や家族が帰宅するときの安心感など、夜景のライティングは心にも作用します。 ライティングには、電球で直接照らす方法もあれば、間接照明で植栽に優しく光を当てる方法もあります。間接照明とは、照明器具の光を壁や天井などに反射させ、間接的に光を当てる方法です。光源が直接見えないので、まぶしさを抑えるとともに、照らされる壁面の素材感の陰影を際立たせたり、空間を柔らかな雰囲気にするなどの演出ができます。 家人が我が家の外観を見るのは夜景のことも多いので、ぜひ照明にもこだわってエクステリアデザインを考えてみてはいかがでしょうか。 設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司