-
外構事例
【海辺の住宅実例】海と空を間近に望むラグジュアリーな別荘の内外をたっぷりご案内
トンネルを抜けると、そこには青い空と紺色の別荘 トンネルを抜けると、青空を背景に目の前に現れる紺色の別荘が、今回ご紹介する住宅。じつはその建設には、私も少しだけ関わらせていただきました。 2024年の4月初旬に携帯電話が鳴り、「三浦半島に別荘を建築するのですが、工務店の大工さんに口頭で説明してもうまく伝わらないので、大工さんに分かるように外回りや室内の絵を描いてほしい」との相談を受けました。それが、こちらの住宅。施主様は大変熱心で、住宅の外部や内部の仕上げ材から家具まで自ら調べあげて理解が深く、大変素晴らしい別荘が誕生しました。 今回は、そんなこだわりの詰まった別荘を、外観から内装までたっぷりご案内します。 紺色に白のラインがクリーンな外観 別荘の外壁は、木目調ラップサイディング。細長い板材を重ね張りしていくラップサイディングでは、壁に段差が生まれ、立体感や陰影を楽しめます。ビビッドな紺色の外壁に対し、屋根の破風(はふ)や鼻隠し(はなかくし)、サッシは真っ白で、その対比が鮮やかですね。ベースの色に対し、白いラインを入れるとシャープなイメージになり、清潔感が生まれます。今回のような紺色ベースにホワイトラインは、リゾート感の演出にぴったりです。 ちなみに破風は雨樋をつけない屋根側面を、鼻隠しは屋根の下にある垂木(たるき)の切り口を隠す部材のこと。 別荘の背景は緑に覆われ、空気が美味しく気持ちのよい環境です。 高台にある別荘。深い緑を背景に、紺色にホワイトラインが引き立つ外観です。 エントランスは赤いポストがワンポイント 緑に囲まれた爽やかなエントランス。 赤い宅配ボックス付きポストと、真っ赤なポインセチアがおしゃれ。 階段を上ると、紺色の外壁に映える白い玄関ドアがあります。その脇には観葉植物ドラセナ・コンシンネの鉢植えと、赤い宅配ボックス付きポストが。ポストの赤と色を合わせたポインセチアを添えたワンシーンも素敵ですね。 海で楽しんだ後はヘッドの大きなシャワーでさっぱりと。 エントランスの奥には外壁がくぼんだスペースがあります。エントランスからアクセスしやすいこの場所には、シャワーヘッドのついた水栓を設置。クルーザーに乗ったり、海で楽しんだ後は、建物内に入る前にシャワーを浴びることができて便利です。 住宅内へ! ささら桁階段のあるエントランスホール 側板や蹴上がなく、デザイン性の高いささら桁階段。踏板は天井と揃えて木製で。 それでは、いよいよ玄関ホールに入ってみましょう。壁には長い角を伸ばす真っ白なシカのオブジェが。そして、ホールが広く明るく見えるように、シースルーですっきりとしたささら桁階段を設置しています。階段の上部はロフト収納スペース。ヒノキの天井と、階段の踏み板の色を合わせて統一感を演出しています。 開放感あふれるリビング・ダイニング・キッチン キッチンの面材は紺色で、外壁のラップサイディングとお揃いに。 リビング・ダイニング・キッチンと、ウッドデッキの向こうの海や空が一体になる、開放感あふれる心地よい居住スペース。 階段の左手のドアを開けた向こうは、広々としたLDK(リビング・ダイニング・キッチン)スペースです。屋根の勾配に合わせて斜めになった勾配天井が、オフホワイトにまとめた壁面とともに、開放感のあるリラックスした雰囲気。キッチンは特別に要望し、外壁と同じ紺色に揃えたこだわりカラーコーディネート。壁際の長いI型とアイランドキッチンで構成されています。 天井にはプロペラファン、梁にはレール付きスポットライトを設置。 大きなプロペラファンが取り付けられた板張りの勾配天井は、見事なヒノキの梁をむき出しにして、高級感を演出。梁の下にはレール付きのスポットライトを設置していますが、その一部はじつは音響のスピーカー。スポットライトと同じ形をしているのがさりげなく、おしゃれですね。 海を望む窓の横に据えられた薪ストーブ。 石張りの壁と黒いストーブの、シックで絶妙なコントラスト。 南向きに開口部が広い折れ戸の掃き出し窓があり、部屋の隅にはシンプルでスッキリしたデザインの薪ストーブが設置されています。薪ストーブの熱を遮熱する石張りの壁には、ストーブより少し明るめの色の石を採用。微妙な石のテクスチャーが背景となり、主役の黒い薪ストーブを引き立たせています。 くつろげる最高のリゾート! ジャグジーが埋め込まれたこだわりのウッドデッキ 大きなパラソルの背景は、視界いっぱいに広がる海と空。 ウッドデッキに埋め込まれたジャグジー。 全開口の窓に切り取られた海と空の風景は、まるで刻々と変化する大きな額縁の絵のようです。窓から屋外へと結ぶウッドデッキは、室内の床と高さをフラットに揃えたことで、外周のフェンスが低く見え、海とウッドデッキの一体感が抜群! ウッドデッキにはパーゴラを設置し、さらにその下には夏の暑い日差しもしのいでくれる大きなパラソルを据えて、贅沢なくつろぎ空間が出来上がりました。 この空間のハイライトは、ウッドデッキに埋め込まれた純白のジャグジー。ジャグジーからの海の眺めも最高です。脇役のソテツが、リゾートの雰囲気を醸しながら一層景色を引き立てます。 ジャグジーの脇役は、リゾート感があり幸運を呼ぶといわれるソテツ。 ちなみに風水では、ソテツは細くとがった葉が邪気を払い、よい気を呼び入れるといわれています。また花は黄金色で、金運を呼ぶのだとか。ただしソテツには毒性があるので、赤ちゃんなどが誤って口にしないように注意しましょう。 くつろぎのリクライニングチェア。 ジャグジーの横にはリクライニングチェアが。高さが低くデッキに近いほどくつろぎや安らぎが生まれやすいため、角度を調整して身体をゆったりと伸ばせるリクライニングチェアは、ラグジュアリーなアウトドアのための最高のガーデンファニチャーです。 シンプルで移動が簡単なピザ窯。 このウッドデッキにはピザ窯も用意されており、本格的な美味しいピザが楽しめます。選んだのは、移動がラクな小ぶりの窯。取材前日にも、知人のイタリアンシェフなどの仲間が集まり、シェフが腕を振るった窯焼きの出来立てピザとワインで盛り上がったのだそう。ステキなアウトドアライフを満喫していますね! バレルサウナと水風呂のリラクゼーションスペース 人気のバレルサウナも。 サウナの後は、海を眺められる水風呂へ。 建物の裏手に向かうと、ただいま大人気のバレルサウナがあり、手前には立水栓付きの水風呂の桶がありました。ここからも海が見えるよう、水風呂の配置が工夫されていることがよく分かります。 とっておきの風景がもう1つ。施主様から「屋根に上ってみませんか?」と誘われ、ハシゴをかけて上ってみると……海が広く見え、鳥にでもなったかのような何ともいえない景色です。ストレスも解消されそうですね! 屋根に上ると真っ青な海が一層大きく見えます。 海が眺められるバスルームや機能的なトイレ 広くゆったりとしたバスルーム。 バスルームの窓からも海が。 最後に、バスルームも拝見。扉をあけると大きな鏡があり、浴槽は十和田石、浴槽の四方にはヒノキの板を張って、高級感のあるつくりです。十和田石の浴槽は、お湯を張ると水の色がグリーンに見え、温泉気分を味わえる仕掛けつき。参考までに、十和田石の浴槽は滑りにくく、しっとりした肌触りが特徴です。奇跡的に酸化されずに火山灰に閉じ込められたことで、緑色凝灰岩になったためにグリーンに見えるのだそうです。 こちらのバスルームからも、窓越しに海の眺めが楽しめます。 トイレは機能性がある壁材がポイント。 そして、トイレも拝見! 一見なんの変哲もないトイレなのですが、この壁面には、LIXILのエコカラットという壁材を使用。これは漆喰(しっくい)と同様に、ニオイ吸着効果がある壁材で、トイレに限らず、キッチンやお部屋など、あらゆるところに使用できます。この壁選び一つとっても、細やかな配慮が行き届いていることが分かりますね。 最後に… 今回ご紹介した、施主様がこだわり抜いた別荘。私自身も、建てる前からのお付き合いができたことは大変勉強になりました。大工さんも臨機応変に対応できる腕のよい職人さんで、在来工法のよさも体験できました。 取材前日に開催されたピザパーティーには、カマキリさんも参加していたようです。ナチュラルなライフスタイルは、心身ともに癒やされ、本来の人間の生き方を思い出させてくれますね。 皆さんも、ぜひ今年は自然と接する時間を作り、健康な毎日を送る余裕のあるライフスタイルを始めていきましょう! プロデュース:大朝毅施工:有限会社三和工務店 渡辺三郎
-
外構事例
【住宅実例】夜景シリーズVol.3 さながら高級リゾート!? バレルサウナのあるくつろぎの家を拝見!
クローズスタイルの豪華なファサード 長いアーチが目を引くモダンなファサード。 今回ご紹介するのは、千葉県印西市にある、敷地の周囲を塀で囲ったクローズ外構スタイルの住宅事例です。 こちらの住宅の顔であるファサードは、ガレージドアや塀などソリッドな構造物で構築された、リゾートホテルのような広々とした高級感あふれるつくり。変形敷地に建てられているため、門袖や塀は道路と平行ですが、住宅はその正面ではなく、右斜め後方にあるのがユニークです。 敷地全体を囲む高さ2mほどの塀は、明るい色の自然石を積んだもの。石を割ったテクスチャをそのまま生かした割肌仕上げで、広い面積であっても単調さを感じさせません。濃色の門扉の脇にある門袖は、腰までを石積みにし、黒いボーダーを挟んで上部はマットな白を組み合わせています。このデザインを反復するかのように、隣の塀はマットな白に黒い笠木のボーダーでシンプルに。門扉から離れるにしたがって淡い色へとフェードアウトするカラーコーディネートが、一層門扉まわりを強調してくれます。 そして、ともすれば漫然としがちな間口の広いファサードを、ぐっと引き締めるのがアーチの存在。焦げ茶色のアーチが、角と直線が際立つ都会的なデザインで全体をまとめ、印象的なファサードを作り出しています。 シンボルツリーの常緑ヤマボウシが植わる植栽スペース。下草には斑入りヤブランを。 植栽の地面は、斑入りヤブランと小石ですっきりとカバー。 アーチの足元には、塀と同じく割肌仕上げの天然石を積んだ植栽スペースが。シンボルツリーである常緑ヤマボウシに、下草の斑入りヤブランと自然石をさりげなく並べ、土を見せずに清潔感があるシンプルモダンな植栽が、ファサード全体の高級感にフィットしています。 ヤマボウシは、里山のような雰囲気が味わえる、日本に自生する雑木です。上品な白い花や食用にもできる実をつけ、年間を通して花、実、葉の様子を楽しむことができるため、シンボルツリーとして人気の高い樹種。よく見られる落葉性のヤマボウシのほかに、こちらの庭でも植栽されている常緑ヤマボウシがあり、常緑種は落葉種に比べて少し成長が遅く樹高も低めという特徴があります。コンパクトにまとまりやすいので個人邸の庭でも扱いやすく、また落ち葉掃除の手間もかからないというメリットから、庭木におすすめの種類です。 ゆったりとくつろげるアウトドアリビング 門扉を抜けると目に入る、周囲から一段くぼんだアルコーブになったエントランス。 開放感がありながら、ゆったりと落ち着けるアウトドアリビング。 門扉を開くと、左手に広々とした駐車場があり、右手正面には住宅のエントランスが。住宅方面へと足を進めると、ラグジュアリーなアウトドアリビングが現れます。アウトドアリビングとは、室内のリビングとつながるようにテラスを設けた、屋外のリビングのような空間です。セカンドリビングと呼んだほうが分かりやすいかもしれませんね。通常シェードや屋根を設置するため、強い日差しやちょっとした雨でも大丈夫。屋外用のソファやテーブルを置けば、ブランチやコーヒーブレイクを楽しむなど、くつろぎのひとときを過ごすことができます。 こちらの住宅のアウトドアリビングも、ゆったりとくつろげそうな屋外用のソファやベンチ、クッションに、清潔感のあるローテーブルが据えられ、家でのリラックス時間を満喫できそう。ベンチの脇にはシンプルな四角いボウルの立水栓が設置されていました。浅めの四角いボウルがシャープでおしゃれなデザインです。屋外に設置されているので、多少水がはねたりこぼれても気になりませんね。 モダンでスタイリッシュな立水栓。 気持ちのよいバレルサウナで至福のおうち時間 敷地奥へと続く、サイドヤードの飛び石の小道。 アウトドアリビングからさらに奥へと進んでみましょう。住宅の横を抜ける、ベージュの砂利敷きに飛び石を配した小道を通って、敷地の奥までたどり着くと、ビックリ! 板張りの塀でしっかりと囲まれた中に、バレルサウナがありました。勝手口からもアクセスでき、落ち着ける丁度よい広さのスペースです。 勝手口の前にバレルサウナのあるくつろぎスペース。撮影時は屋根がありませんでしたが、現在は屋根をつけてさらに落ち着けるスペースになっているそう。 バレルサウナは樽(barrel)のような円筒形の形状をしたサウナで、フィンランドが発祥といわれています。この樽は通常より強度があり、変形しにくいのが特徴で、熱を均一に保つことに優れています。ロウリュといって、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させることで、サウナ室内の湿度や体感温度を上げるのが、フィンランド式のサウナ入浴方法。発汗を促し、呼吸がしやすくなるので、ドライサウナで感じる息苦しさが軽減されます。サウナストーンに水をかけるときは、真上からゆっくりかけて少しずつ体感温度を上げるよう心がけましょう。 ちなみに、ヤードポンド法による体積を表す単位バレルの語源は、このバレルサウナと同じ「樽」。樽が液体を詰める用途で使われることに由来します。証券取引で原油の単位としても、よく聞かれますね。 ホテルアプローチのようなライティングで夜を彩る 明かりが灯ったファサードは、リゾートホテルの入り口のような贅沢さ。 夕方、周囲が暗くなってくると、アーチのフレームからもれる光のラインや、右手のシンボルツリーの常緑ヤマボウシを照らすアッパーライト、門袖のライン状のライティングなど、温かみのある色合いの光がファサードを照らし出し、一層洗練されたゴージャスな雰囲気に。ファサード回りの明色の床や門袖が、ライティングに明るく浮き出るように映えて、荘厳さまで感じます。 *ライティング商品のご紹介アーチは、タカショー・ホームヤードシステム「エバースクリーン」フレームライティングフェイス表札を照らすボーダー状のライト:タカショー・レターバーライト 遠近法を利用したデザインとライティングのポイント アーチを浮かび上がらせる、クールなスリット状のLEDライティング。 今回ご紹介した住宅事例では、変形敷地だったこともあり、ファサードの門袖や塀は道路と平行に配置されていますが、住宅は斜め方向に設置されています。この配置によって、遠近法により奥行き感が増幅され、ゆったりと豪華な雰囲気を生み出します。 門まわりのアーチはフレーム効果で間口の広さを強調するとともに、高級感のあるデザインのアクセントに。門袖の横ボーダー状の照明は、表札の文字を照らし出すだけでなく、おしゃれな夜景を演出しています。 床や塀の素材を光沢のある仕上げにすれば、ライトの反射も楽しむことができます。一方マットな素材では、灯りの映り込みはありませんが、少しつやのある仕上げにすることで、ハレーションによる幻想的な世界観を表現もできます。ただし、アプローチまわりの床材を、きれいに磨き上げた光沢のある本磨きにすると、雨天時では滑って転ぶこともあるので注意が必要。磨き具合はホームセンターやショールームに出向き、実際に自分の目で見て研究してみましょう。もちろんライティングも実際に見てみることが大切です! このような塀や建物の配置や、さまざまなライティング効果を参考にして、ステキなファサードを創造してみてはいかがでしょうか? 設計施工 株式会社Office Hanyuda ~Protect Garden~ 羽生田新悟
-
外構事例
【住宅実例】夜景シリーズVol.2 シンプルで飽きのこない、大工さんが暮らす家と庭を拝見!
ファサードはコンクリート打ち放しと工夫された砕石のレイアウトで コンクリート打ち放しに砕石のスリットを入れた、シンプルで飽きのこないデザイン。 道路に向けて続くボーダータイルと砕石のコラボがオシャレ。 建築物を正面から見た際のデザインで、住宅の顔であるファサード。街でもよく見かけるのは、床面がコンクリートの打ちっ放し仕上げだけの住宅です。一方、今回ご紹介する住宅は、そんなシンプルなコンクリート打ち放し仕上げに一工夫が施された、スタイリッシュなファサード。 コンクリート打ち放しの床をいくつかに分割し、間に砕石を詰めデザイン的に仕上げています。道路際から1mほどの場所はコンクリートと砕石を交互に敷いたボーダーデザインとし、玄関までのアプローチには植栽マスを設けてリズミカルな動きを出しつつ、樹木を玄関ドアのソフトな目隠しとして機能させています。ほかではなかなか見かけない面白い構成ですね。また、エントランスポーチと階段にはグレーのタイルを使用し、白一色のコンクリートや砕石主体の色彩を引き締めることで、ファサードをより強調しています。 左右の隣地との境界を区切る塀は、一部を細い縦格子とし、単調さを防いでナチュラルな雰囲気を演出しています。 ゴロタ石と植栽のコラボで和モダンに シンボルツリーのシマトネリコの足元は、ゴロタ石と砕石ですっきりと。 アオハダと足元にもゴロタ石の花壇が。 エントランスドアの手前に配されたシマトネリコと、住宅外壁横に植えられたアオハダの植栽マスには清潔感のある白い砕石を敷き、株元にはこぶし大ほどの大きめでゴロゴロとしたゴロタ石が並びます。花壇の周囲に立ち上がりをつけ、グラウンドカバーを植えるケースも多いですが、このようなゴロタ石と砕石の組み合わせは、スマートで和モダンなイメージになりますね。アプローチにはシンボルツリーの植栽に加えてもう1カ所植栽スペースを設け、こちらはツリバナの足元を覆うグラウンドカバーとしてギボウシやヒューケラ、ヒイラギナンテンなどを並べ、和モダンを強調しています。 エントランス前の花壇には斑入りギボウシやえんじ色のヒューケラなどのカラーリーフを植栽。葉を生かしたキリッとした植栽はスタイリッシュな外構デザインによく似合い、1年中楽しめます。 シンボルツリーのシマトネリコは常緑樹ですが、落葉樹のような枝ぶりと、小ぶりな葉が風にそよぐ姿がステキな庭木です。エントランスに植えるシンボルツリーは、見た目とともに、メンテナンスがどのくらい必要になるかが重要なポイント。「落ち葉」は意外にも近隣トラブルの原因になる場合があります。その点、常緑のシマトネリコは安心ですが、成長が早いので、春から初夏または秋には剪定をおすすめします。真冬は休眠期に入りますが、寒さに弱いため、剪定をすると枯れることもあるので避けたほうがよいでしょう。 ダイニングキッチンとテラスを一体に 一体感のあるダイニングキッチンと屋外テラス。 施主様のご厚意により、室内も拝見することができました。大工さんだという施主様らしく、随所に暮らしの工夫がちりばめられたディテールは必見! エントランスから廊下を通りすぎると、間仕切りのない広いスペースのLDK(リビング・ダイニング・キッチン)がありました。しかもこの部屋は、屋外テラスとつながっているので、より一層広々と開放感があります。よく見るとLDKとテラスの床はフラットにしてあり、全体の一体感を高めています。段差がないので、車いす歩行や足の悪い方にも歩きやすいですね。 ダイニングキッチンと屋外テラスの床は、段差がなくフラットにつながります。 シンプルで使い勝手のよいプライベートテラス ダイニングから見た屋外テラス。 屋外テラスはホワイトベースのタイルに木製の目隠しフェンスで構成。 それではテラスに出てみましょう! マットな質感のホワイトタイルの床や壁を、ダークブラウンの木製フェンスが引き締めます。横板張りのフェンスには、硬質で耐久性が高いウリン材をチョイス。フェンスの高さは2m程度あり、隣家の視線を気にせず安心してくつろげます。また、テラスのコーナー部分には、シャワーヘッド付きの立水栓が設置されていました。シャワーヘッドがあると、ペットがテラスで遊んだ後の足洗い場としても、お掃除の際にも便利ですね。立水栓やシャワーヘッドは、窓回りのサッシと同じシルバーで統一されています。 シャワーヘッドつきの立水栓。 大工さんならでは! 埋め込みのバスルーム・スケール 洗面所の床に埋め込まれたバスルーム・スケール。 バスルームに向かう洗面所に入ってみると、床に埋め込まれたバスルーム・スケール(ヘルスメーター)が。これは驚き! 床とフラットになっているので場所をとらず、子どもが足を引っかけてケガをすることもありません。いちいち取り出さなくてもいつでも計測できるので、バスに入る前には必ず体重を計る習慣が身に付きます。このアイデア、さすが大工さんの家ですね! ちなみにヘルスメーターは和声英語で、正確にはバスルーム・スケールと呼ぶそうです。 バスルームからはテラスを眺められる。 バスルームには、テラスを眺められる窓がありました。外の景色が楽しめる一方で、テラスからは室内が見えない工夫も施されています。 配慮が行き届いたワンコスペース 愛犬のフードボウルと水入れを置く、可愛らしいマット。 壁に囲まれる落ち着いたスペースにあるペット用トイレ。 テラスにつながるダイニングキッチンの隅、食器収納棚と観葉植物の間には、愛犬のためのフードボウルと水入れがありました。床に敷かれたランチョンマットが、ワンコの顔のようなシルエットで可愛らしいですね。廊下の奥に設置されたペット用トイレは、両側を壁に囲まれた物入れの下にあるので、落ち着いて用を足すことができるはず。ホントにワンコ思いの施主様で、幸せですワン! 植栽シルエットでステキな夜景に 夕暮れ時のファサード。いよいよ日が暮れてきました。 エントランスの明かりが格調高い佇まいを演出。 この住宅のファサードは、ライトアップされた夜景も見所です。 周辺が薄暗くなってくると、奥まったエントランスドア周辺が、明るく存在感を増してきます。壁の横に植栽されたアオハダは、チラチラとほの明るくライトアップされ美しい影を壁に描き出します。壁面から少し浮かせて立体感を持たせた、筆記体の横文字がオシャレな門袖の表札も、スリット状のライトに照らされてよりシックな雰囲気になります。 ライトに浮かび上がる表札の筆記体もオシャレ。 白い壁に映るアオハダのシャドウシルエットが幻想的です。 そして、周囲が真っ暗になると、アッパーライトで照らされた、住宅壁面に映る放射状のアオハダのシャドウシルエットが幻想的なシーンを生みます。エントランス手前のゴロタ石と植栽は、低めのポールライトで控えめに照らし、エントランスからこぼれる光の効果で、料亭のような落ち着いたアプローチが演出されています。 料亭のような灯りがシックなアプローチ。 まとめ ホワイトベースのモノトーン構成のデザインは、使う素材次第で、エクステリアのイメージが全く変わってきます。今回ご紹介した住宅のように、打ちっ放しコンクリートの床は、スリット部分に砕石を入れた目地や、ボーダータイルと砕石の組み合わせでオシャレに演出できます。植栽の足元をカバーするゴロタ石は、並べ方次第で、ナチュラルな花壇や景石にもなります。 植栽は、日本の在来種であるアオハダやツリバナを配植して和モダンイメージを強調。在来種とは、昔から日本の自然の中で生きてきたもので、その地域に本来自生している植物です。日本の土地柄や気候に合った植物を植えることで、管理に手がかからないだけでなく生態系も成り立ち、いっそう自然風に近づいていきます。 モノトーン構成のシンプルデザインは、ゴロタ石や砕石、在来種の植栽で、和風や和モダンなイメージになります。ほんのりと柔らかい光や庭木のシャドウシルエットを効果的に取り入れれば、高級感のある印象的な夜景を演出できます。 皆さんも、いろいろな素材を工夫して、素敵なファサードを創造してみてくださいね。 設計施工:ヘブンズガーデン 宮元健太
-
外構事例
【住宅実例】夜景シリーズVol.1 夜景もステキ! ライティングが映えるエレガントな住宅事例をご案内
住宅の高級感にフィットする、重厚な石張りのエクステリアデザイン 住宅外壁とエクステリアは石張りで統一。デザインウォールと門袖(もんそで)にそれぞれテクスチャーの異なる石を用いることで、変化を持たせています。 住宅の一部を格調高い石張りで仕上げた外観デザインに合わせて、エクステリアもさまざまな工夫で高級感を演出。窓の目隠しとなる位置に設えたデザインウォールは、住宅の外壁に合わせたマットな質感のシンプルな石目調タイル張りにし、統一感を演出しています。一方、エントランスの左右を対称に飾るよう据えた門袖は、少しラフな印象の石を用いたランダムな小端積み(こばづみ)。テクスチャーを変えることで、ファサードに個性が生まれています。 小端積みとは、レンガや石などを、小口(細長い厚み部分)を見せるように重ねて積み上げること。花壇や門袖など、横方向のラインを強調したいときに使うと効果的な手法です。 デザインウォールを背景にしたドライガーデン ファサードは石の小端積みとマットな石目調タイル張りで、印象に変化をつけて。 デザインウォール部分に注目してみましょう。デザインウォールのシンプルな石目調タイル張りに対し、小端積みで構成された門袖と花壇の立ち上がりのゴツゴツとした立体感が好対照なデザインです。また、門袖はグレーを基調に暖色の色ムラが入る素材を用い、デザインウォールと花壇はワントーン明るいグレーに統一。3つの要素にそれぞれ共通項を持たせてまとめると同時に、門袖が独立した存在感を放っています。デザインウォールの中央に設けた細長い窓は、デザイン性を高めるとともに、内側への風通しとしても機能しています。 アガベやニューサイランなどが育つドライガーデン。 花壇には、大株のアガベやニューサイラン、マホニア・コンフューサなどを植栽。植物の株元は細かい白い砕石を敷くことで土を隠し、美観を向上させるとともに雑草を生えにくくしています。品のある石張りの住宅とデザインウォールに似合うドライガーデンです。 ドライガーデンとは、乾燥を好む植物で統一したガーデンスタイルのこと。水はけのよい環境を整えてやれば、自然の雨水程度で育つので、頻繁な水やりの必要がありません。ドライガーデンで特に人気の高いアガベは、メキシコを中心に中央アメリカやアメリカ南部に自生する植物です。そのほか、サボテンや多肉植物なども人気の素材です。 ウォールに隠された窓前ガーデン デザインウォールの裏手に広がるすっきりした庭。 石目調タイルのデザインウォールの裏側に回ると、コンパクトな庭がありました。こちらは雑草の心配や水やりがいらない、ローメンテナンスな人工芝を取り入れたガーデンです。 門袖の後ろには黒い木箱が据えられていますが、こちらはなんと、ゴミの戸別収集用ボックス。傷みにくいハードウッドを使い、マットなペイントで仕上げたハンドメイド品です。ハードウッドとは赤道付近に分布する広葉樹の木材で、繊維が密になっているため硬くて重量があり、虫害や腐食に強く丈夫なのが特徴。シックなブラックの中に輝く蝶番や取っ手、止め金具のシルバーが、さりげなくエレガントさを感じさせるアイテムです。 ゴミをおしゃれに隠すハンドメイドのボックス。 メンテナンスが楽な窓前ガーデン。 窓前のローメンテナンスガーデンには、ツリバナが植栽されています。ツリバナは日本に自生している在来種で、環境になじみ手を掛けなくても育てやすい庭木です。ツリバナという名前の由来は、5月から6月の開花期に、枝から吊り下げられたように小さな花がたくさん咲くことから。9月から11月には赤い実がなり、紅葉とともに秋の風情を楽しむことができます。 秋に実る真っ赤な可愛らしいツリバナの実。 ヨーロピアンな門袖まわりと玄関アプローチ サイコロ状のピンコロタイルを敷いたアプローチ。 もう一方の門袖には、ポストや表札などの機能を持たせています。この門袖の後ろは、玄関へと続くアプローチになっています。舗装のピンコロタイルはヨーロピアンな石畳風で、自然な目地が柔らかな雰囲気。それをブラックの門扉で引き締め、高級感を出しています。 タイルやエレガントな飾りでヨーロピアン風の演出。 門扉をくぐり、玄関に向かうアプローチは、施主様の希望でアールヌーボー調のデコレーションが施され、まるでパリの地下鉄の出入り口のよう。舗装のピンコロタイルがよく似合います。 玄関上のアールヌーボー調デコレーション。 夜景が生きるデザインウォールとアプローチ 夜の玄関アプローチ。 デザインウォールを優しく照らすライティング。 夜景もご覧のように、とてもおしゃれな雰囲気。デザインウォールの中央にあけた細長い窓から室内の灯りが漏れ、合わせて花壇に設えた間接照明が植物のシルエットを浮かび上がらせスタイリッシュ。玄関アプローチは電球で足元を明るく照らし、街灯に照らされたヨーロッパの街角のような雰囲気に。 ライティングは幻想的な世界を演出できる手法 ライティングは、一般には防犯を目的とすることが多いと思いますが、幻想的な夜景を演出する効果もあります。夜道の歩行者や家族が帰宅するときの安心感など、夜景のライティングは心にも作用します。 ライティングには、電球で直接照らす方法もあれば、間接照明で植栽に優しく光を当てる方法もあります。間接照明とは、照明器具の光を壁や天井などに反射させ、間接的に光を当てる方法です。光源が直接見えないので、まぶしさを抑えるとともに、照らされる壁面の素材感の陰影を際立たせたり、空間を柔らかな雰囲気にするなどの演出ができます。 家人が我が家の外観を見るのは夜景のことも多いので、ぜひ照明にもこだわってエクステリアデザインを考えてみてはいかがでしょうか。 設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司
-
外構事例
【住宅事例】大好評シンプルモダンシリーズ第4弾 住宅とエクステリアを徹底的に解説!
直線が生きる住宅とエクステリアデザイン モノトーンで構成された玄関まわりは、徹底した直線が映えるデザイン。 今回ご紹介するのは、神奈川県藤沢市の閑静な一角にある住宅です。 すべての要素が直線で構築されたアプローチは、ミニマルでモダンな佇まい。外壁の素材は、木調とも石調ともつかないテクスチャーで構成されています。これにフィットするエクステリアが、マットな質感のシンプルなブラック門袖。門袖とは玄関の前に設置する壁のことで、玄関まわりのデザイン性を高め、玄関ドアを開けたときの目隠しにもなります。 左脇のアプローチ階段の目地にも注目しましょう! 30cm角のブラックタイルに、リズミカルなホワイト目地のコントラストがオシャレですね。ポイントは、階段の段差がタイルの半分の15cmなので、半分ずつずれてきれいに割付けされていること。階段の手すりはブラックのフラットバーで、その薄さがシンプルかつスタイリッシュな印象を強調しています。 階段横の壁際に設置してあるコロンと四角いキュービックなポストは控えめなグレーで、周囲になじんで主張することなく、ブラックな門まわりに視線が集まるデザインです。 ゴールド×ブラックのシックな表札。 表札は横文字筆記体のゴールド。黒の背景に華やかな金文字が目を引きますが、文字の大きさは小ぶりで控えめなところが絶妙なバランスです。 全体をシンプルモダンに統一し、小物もシンプルでオシャレに! 無駄のないデザインのコンクリート製サイクルスタンド。 道路際から2m程度の幅を持たせた、ホワイトの土間コンクリートのアプローチスペース。ここには、コンクリート製のスリットが入っているブロックが設置してありました。これはじつは「サイクルスタンド」。スリット部分に自転車のタイヤをはめて駐輪します。無駄のない外観で、とてもオシャレですね! こうした細かい箇所にもシンプルデザインへのこだわりを感じます。 シンプルモダンで統一された住宅。 道路から見た住宅の全景。まるで立方体のブロックのような、直線を多用したデザインがカッコよく、存在感を放ちます。敷地を縁取る土間コンクリートのホワイトのライン、また住宅のグレーとカーポート屋根のナチュラルシルバーとの対比もステキです。 奥に向かう通路の先にはタイルテラスとガーデンが サイクルポートを通って庭に向かう通路。 60cm角のタイルを張ったタイルテラス。 カーポートを通って奥へ進んでいくと、広いテラスに到着します。テラスは、60cm角のグレーのタイル張り。シンプルながらも、タイルの色ムラやテクスチャーに、洗練されたゴージャスな雰囲気が漂います。 立水栓のグレーチング(格子蓋)には、シルバーが輝くパンチングメタルを使用。 テラスの壁際に設置された立水栓。シルバーの蛇口とブラックポールを組み合わせた引き締まったデザインで、クールな印象を与えます。立水栓の足元にある水を流すグレーチングは、パンチングメタルが使用されています。パンチングメタルとは、アルミ、鉄、ステンレスなどの金属に、金型を使って孔あけ加工を施したもの。もともとは階段の目隠しやフェンスなどに使われる建築材料で、、孔の形状や大きさも大小さまざまな種類から選ぶことができます。ステンレス製であれば水場でもさびにくく、実用性もばっちり。耐久性やデザインの自由度が高く、スタイリッシュな穴あきのパンチングメタルをグレーチングに使うのはアイデアですね。 平滑なタイルテラスは、ホームパーティーなどで床面が汚れても、立水栓からホースを使って水を流せば、簡単に掃除できます。日差しによる経年劣化が少ないことも利点です。 フェンスで囲まれた小さな庭の植栽と剪定のコツ 人工芝と高めの目隠しフェンスに囲まれた小さな庭。 タイルテラスの向こうは植栽スペース。周囲を囲む高さ1.8mほどの木調横板張りフェンスが、隣家からの目隠しになっています。芝生の緑が鮮やかですが、じつはここは、見栄えがよくメンテナンスが楽な人工芝を取り入れたガーデンです。 敷地のコーナー部分にはシマトネリコ、その隣にはオリーブが植栽されています。シマトネリコは常緑樹ですが、落葉樹のように小ぶりの葉を持つ、樹形がきれいな庭木。成長が早い植物なので、真夏以外ならいつでも剪定ができますが、寒さに弱いので、冬の剪定は避けたほうがよいでしょう。冬が終わった後の3月終わりから5月ぐらいの時期が最適です。 オリーブは、シンボルツリーとして最近はとても人気のある常緑樹です。樹形をきれいにするために、伸びた枝を途中で切り揃える「切り戻し剪定」をするのがおすすめです。切り戻し剪定をする際は、外向きに生えている芽のすぐ上で切るようにしましょう。こうすることで、枝が真上ではなく斜め横方向に伸び、樹形が整っていきます。メインの剪定に適した時期は2月中旬〜3月です。5〜10月は成長期なので、この時期の強い剪定は控えましょう。葉を減らすなどの軽い切り戻し剪定は1年中行うことができますが、切りすぎると樹形が乱れてきれいに見えなくなるので注意が必要です。 素材のテクスチャーを生かすのがシンプルモダンのカギ アプローチ階段&手すりと門袖の統一感がいい。 住宅の外壁が木調、石調などのテクスチャーを持つ場合や、モノトーンの濃淡が多い場合は、エクステリアの素材はシンプルにすることが大切です。この住宅の例のように、門袖や階段はブラック単色でスッキリと。階段のタイルのホワイト目地などでグラフィカルな変化を出すことで、センスが光る住宅デザインが生まれます。 また、敷地の床面はホワイトの土間コンクリート、アプローチに植栽されたシンボルツリーの足元にはブラックの少し大きめの砕石を敷くなど、単調さの中に変化を出す工夫も満載。土間コンクリートを分割してレイアウトしているところにも、さりげないスマートさを感じさせますね。 まとめ シンボルツリーの足元にはブラックの砕石を配置。 モノトーンを主体とするシンプルモダンな住宅で、センスのよいデザインを作るポイントは、広い面積を占める素材の選び方や割付けの具合です。シンプルモダンは単調になりがちですが、この実例のように細かな部分まで配慮して設計することで、シンプルながらも絶妙な変化に富んだデザインが構成できます。 近年人気のモノトーンのコーディネートに興味をお持ちの皆さんは、ぜひ細部にわたって自分流の素材選びや割付けにこだわったデザインを研究してみましょう!! 設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司
-
外構事例
【住宅実例】大好評シンプルモダンシリーズ第3弾! モノトーンカラーの使い方で高級感を演出
モノトーンのコントラストを生かしたシンプルモダンな外観 どっしりとした印象のファサード。門扉の前の床面は、グレーの色調の違いを生かしてモノトーンながらリズミカルに。 今回ご紹介する住宅は、人気の観光地である神奈川県の江ノ島から、車で15分ほどという好立地にあります。 外壁はシンプルな四角いホワイトタイル調のサイディング。2階バルコニーの手すりには採光性が高い半透明の型ガラスとグレイッシュなアルミサッシを採用。家の外観とコーディネートし、玄関前には絶妙な色ムラのある濃いグレーの石張りの塀を設け、アプローチの床にもグレーから白色のタイルをリズミカルに敷き詰めてあります。住宅全体を見たときに、重心の低い位置に濃いグレーの塀があること、そして外壁のタイル調サイディングよりも大きな石が張られていることで、どっしりと安定した雰囲気になり、高級感も生まれます。 玄関アプローチはゆったりと 塀と門柱の間には、細長い角材を並べた通気性のよい柵を設置。 住宅の顔にあたる門まわりを詳しく見ていきましょう。 石張りの塀の奥に同色の門柱を設置することで、門扉前にスペースが生まれ、奥行きが際立ちますね。特に、塀よりも門柱を高くしているのがアクセントに。塀と門柱の隙間には、人が通れないように目立たない柵を設置し、防犯機能を持たせながらも風が抜けるようデザインされています。 門扉から玄関扉へのアプローチ。 濃色のフラットバーの手すりと花壇のレンガタイルがおしゃれ。 玄関前のエントランスポーチ脇には、黒っぽいレンガの花壇を設置し、可愛らしいフェイジョアを植栽。ポーチに設置されたフラットバーの手すりと花壇の濃色のカラーを合わせ、エントランスをすっきりとまとめています。 フェイジョアは南米原産の熱帯果樹。意外に寒さに強く、-10℃前後でも枯れないため、比較的育てやすい植物です。常緑なので、一年を通してシルバーがかった明るい葉姿が楽しめるのも魅力です。ちなみに、私もフェイジョアの実を食べた経験がありますが、別名パイナップルグァバと呼ばれるとおり、バナナとパイナップルを足して2で割ったような香りと味がします。収穫後少し時間が経つと酸っぱくなってしまいますので、収穫してすぐ食べられる自家栽培にぴったりの果樹ですね。 カーポートもモノトーンでまとめてシンプルモダンに シンプルなカーゲートとカーポート。 門柱の隣には、跳ね上げ式のカーゲートがあり、その奥は薄いアルミルーフのカーポートになっています。圧迫感を感じさせないシンプルで軽やかなルーフと、水平ラインを強調した黒いカーゲートのコントラストが素敵ですね。 ブラック×シルバーのコントラストが際立つ物置。 カーポートの支柱はブロックに組み込み、スペースを無駄なく使っています。 カーポートの奥に設置された引き違い戸の物置には、アルミのシルバーに黒い扉が引き立つカラーをチョイス。土間コンクリートのカーポートスペース全体がモノトーンになり、統一感があります。また、カーポートの黒い支柱の足元を、敷地端のブロックの立ち上がりに組み込んでいるというつくりも面白いですね。通常であれば、カーポートの幅が合わずに設置をあきらめてしまうところですが、このように組み込むことで整頓され、非常にきれいに収まっている点も見事です。 すっきりしたデザインのウリン材のウッドデッキ 芝生の庭を進むと現れるウッドデッキ。地面の高さとの差が小さいため、手すりが設置されていません。 エントランスから奥へ進むと、建物の周囲を囲むように芝生の庭が広がります。じつはこの芝生は人工芝なのですが、一見して人工芝と分からないほど自然な色合い。最近は、緑一色ではなくワラ色を混色したものなど、自然に見えるよう工夫された高品質な人工芝がたくさんあります。 建物横の芝生の庭はゆるい斜面になっていて、奥には室内と庭を結ぶウッドデッキが設置されています。庭が斜面になっている理由は、ウッドデッキと芝生の段差を低くするため。手すりのないウッドデッキは、シンプルで広々とした見た目はもとより、段差が小さいので安心して使えます。ウッドデッキには耐久性の高いウリン材を使用しているので、ローメンテナンスな点も嬉しいですね。 ウッドデッキに作られたフタを開けると洗い場が。 ウッドデッキ脇の住宅壁面には、水栓が設置されています。ここに水場があれば、植栽の水やりやウッドデッキのお掃除が簡単にできて便利ですね。そして、水栓の下に設けられた、格子状のフタに注目! このフタを開けると、なんとウッドデッキの中に洗い場が現れます。排水マスを兼ねた洗い場は、使わないときは格子のフタをしておけば、見た目もスッキリ。先ほどのカーポートの支柱同様、納まりがよく気持ちのよいデザインで、とっても素敵ですね。 横板張りの樹脂フェンス 周囲と庭を隔てるフェンスの前につくられた花壇。 芝生の庭の外周は横板張りのフェンスで囲まれ、外回りからのほどよい目隠しになっています。木製のフェンスに見えますが、これは樹脂フェンスという、高発泡ウレタンの表面にABS樹脂をコーティングしたもの。高発泡ウレタンとは、ウレタン樹脂を発泡させて作る、非常に小さな泡の中に熱伝導率の低いガスが閉じ込められたウレタンフォームのことで、断熱性や気密性に優れる素材です。この高発泡ウレタンを使った樹脂フェンスは、木板のようなイメージが演出でき、色数もブラックのほか、ブラウンの濃淡、ホワイト、グレーなど11色(2024年現在)の多彩なカラーから選ぶことができるため、近年人気上昇中です。 フェンスの足元には、黒いタイルを縁石にした花壇が。植栽が成長すれば、フェンスを優しく隠してよりナチュラルな印象になることでしょう。また、この花壇は少し斜めに傾けて設計されています。庭全体が柔らかいイメージになるよう、細かいところまで配慮が行き届いたデザインです。 道路に面した植栽。グレーの大きめの石で地面をカバーし、モノトーンカラーの住宅との統一感も抜群。 道路からこの住宅を眺めると、玄関前の塀と樹脂フェンスの境目には花壇があり、樹木の足元にハーブのローズマリーが植栽されています。細い縦格子のフェンスを背景にした植栽は、歩行者からの景観をよくするだけでなく、目隠しとしての役割も果たします。風通しや見栄えもよく、ナチュラルな外観のアクセントとして素敵ですね。 素材とカラーコーディネートのポイント:ホワイトとブラックの比率を同じにしないこと! 正面以外から見た景観も、すっきりときれいにまとまっています。 シンプルモダンの基本は、モノトーンカラーとしてホワイトとブラックのコントラストを明確にすることですが、それぞれの面積の比率を同じにしないことでバランスが取れますよ。また、こちらの住宅のように、上部を明るく、下部を暗くすることで、住宅全体を見たときに安定感が生まれ、高級感も演出できます。 サッシやフレームなどのパーツもデザインのポイント。ブラックにすると引き締まったイメージ、グレーにすると和らいだソフトなイメージになります。また細いフレームであれば、濃い色でも薄い色でも繊細なイメージになりますが、太いフレームは濃い色にすると、時に野暮ったいイメージになることもあるので、よく検討してみましょう。 まとめ シンプルモダンといっても、塀、門柱、フェンス、カーポートなど、ただモノトーンのコントラストでまとめただけでは、見栄えのよい素敵なエクステリアにはなりません。カラーコーディネートの基本は、広い面積は明るく、狭い面積は暗くすること。それに加えて、タイルや石のサイズやテクスチャーの違いも重要なポイントです。一概には言えませんが、小さいサイズは上部に、大きいサイズは下部に用い、広い面のテクスチャーは単色のベタでなく微妙に色ムラがあるほうが、高級感が出るでしょう。 素材選びの際は、カタログやネット検索の画像を見て、テクスチャーやカラーの検討をするのもよいのですが、エクステリアメーカーの展示場に出向き、実際にいろいろな素材を見て触って研究してみるのもおすすめです。いろいろな発見があり楽しくなりますよ。 シンプルモダンのエクステリアデザインに興味を持たれた読者の皆さん! ぜひ、参考にしてくださいね。 設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司
-
外構事例
【住宅実例】大好評シンプルモダンシリーズ第2弾! モノトーンカラーがシャープな住宅をご紹介
住宅とエクステリアで描くモノトーンのコントラスト 家の印象を決めるエクステリアとガーデンにはさまざまなスタイルがありますが、最近人気なのが、シンプルモダンなスタイル。今回ご紹介するこちらの住宅も、シンプルモダンの好例です。 住宅のベースとなるカラーは、少しブラウンが混じったチャコールグレーと、温かみのあるベージュ。色数を抑えたモノトーンの色合わせですが、モノトーンとはいっても、ただ単純な白黒カラーではありません。モノトーンには、テレビのカラーバランスの調節のように、温かみ(ウォーム)のあるものやニュートラル(中立)、そして涼しい(クール)イメージなど、じつはバリエーションがあるのです。この住宅の色彩を構成するのは、温かみのあるブラウンと深みのある濃いグレーが混色された外壁と、白色に近い柔らかなベージュで統一された門柱やアプローチです。 また、外壁に使われている横向きに細長いボーダータイルに合わせ、ウッドフェンスも横板張りにすることで、水平ラインによる統一感も演出しています。ウッドフェンスは耐久性に優れたウリン材を使用。高密度で、塗装をしなくても腐らず長もちするため、自然な経年変化を味わうことができ、ナチュラルな風合いを楽しませてくれます。このウッドフェンスにより、エントランスドアが開いていても下方の半分は目隠しされ、エントランスの土間が見えないところもポイントです。 アプローチ階段を上るとオシャレなデザインウォールが 白色に近いベージュをベースカラーに採用したデザインウォールと門柱。 30cm角のタイルが張られたアプロ―チ階段を上がると、ブラックの馬目地タイルを囲んだデザインウォールが現れます。馬目地とはタイルやレンガの積み方の一種で、垂直方向のタイルの列を半分ずつずらしたように、互い違いに重ねる積み方のこと。周囲がホワイトに近いベージュやアイボリーの色彩の中、注意を引き付けるフォーカルポイントになっており、視線をエントランス方向に誘導する効果があります。デザインウォールのベージュは、門柱と同色。同じようにベージュの中にブラックのポストが浮かび上がる門柱との対比も素敵です。 アプローチ階段の手すりや支柱はブラックのフラットバーで、全体の印象を引き締め、シャープなイメージを作っています。 シンボルツリーはニオイシュロラン(コルディリネ)で 寒さに強いニオイシュロラン。 植栽で海に近い南国イメージを演出。 デザインウォールの隣には、エントランスへと誘うシンボルツリーのニオイシュロランが植栽されています。ニオイシュロランの足元には、えんじ色やキャラメル色のヒューケラ、ドライガーデンに似合う細長い葉の植物などが植えられ、輝くような白い玉砂利が下草の植栽を引き立てています。湘南海岸から2キロも離れていないという立地条件にふさわしい、南国イメージが伝わる植栽ですね。 ニオイシュロランは別名コルディリネ・オーストラリスとも呼ばれ、ニュージーランドを原産とする常緑樹です。南国風の印象ですが、意外と寒さに強く、雪が積もらない地域であれば地植えができます。日当たりがよい場所、または明るい日陰を好みます。ニオイシュロランはドラセナと間違われるケースもよくありますが、ドラセナはアジアやアフリカなどの熱帯地域に分布する常緑樹で、別種。50種類ほどが知られるドラセナは、観葉植物としてなじみ深く、「幸福の木」ともいわれています。 ウッドフェンスの向こう側にウッドデッキの庭が ウッドデッキでは縁側のようにくつろぐこともできる。 ウッドフェンスの奥にはウッドデッキの庭が。フェンスがある道路側はウッドデッキを広く取り、住宅に接する部分は縁側のように腰掛けて使うこともできるよう工夫されています。 地植えの庭の植栽の管理が大変な方は、このようにウッドデッキを広く取って地面のスペースを調節すると、管理がしやすくなります。また、ガーデンセンターなどで鉢植えの植物を購入し、ウッドデッキやフェンス際に置いて楽しむのも一つの方法。鉢植えは水やりが必須ですが、移動できるのが大きな長所です。気温の変化や植物が好む環境に応じて室内に取り込んだり庭に出したりすれば、寒さに弱い植物なども枯らさずに育てられます。 鉢植えの水やりのコツは、毎日少しずつではなく、一度にたっぷりと水を与え、土が乾燥するまで待って、またたっぷりと与えること。このコツを押さえれば、根腐れを防いで元気に育てることができますよ。また、株元の地面だけでなく、時々は葉にも水をかけるとよいでしょう。ハダニの対策になるだけでなく、気孔がきれいになることで蒸散しやすくなり、庭に涼しい空気が循環するようになります。興味のある方は、植物の蒸散作用で調べてみてくださいね。 まとめ シンプルモダンのカラーコーディネートのポイントは、べースカラーを決めるときに、モノトーンでもウォーム(温かみ)、ニュートラル(中立)、クール(涼し気)の、どのカラーにするのかを決めること。これらのカラーにはホワイトの色味が重要で、どのホワイトを選ぶかによって全体のイメージが変わってきます。こうして選んだカラーで全体をコーディネートして統一感を演出し、シンプルモダンのイメージに品格を出すことができますよ。 また、モノトーンのコントラスト(明暗)は、狭い面積部分には濃い色を配することで全体が引き締まります。配色に加え、窓枠や階段の手すりなどの形状にこだわることで、より品のある見栄えのよいおしゃれなデザインに。また、シャープでシンプルなデザインの住宅には、たとえ少しであっても植栽スペースを設けるようにしましょう。シンプルモダンの固さを和らげ、うるおいを感じるアプローチになります。 読者の皆さんも参考にされてはいかがでしょうか? 設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司
-
外構事例
【シックな焼杉の家】細部までこだわりが光る美しい住宅と庭園を拝見!
落ち着きを演出する雑木の庭 今回ご紹介する住宅は、神奈川県鎌倉市の住宅街の角地にあります。杉の板を黒く焼いた焼杉の板張りの外壁が日差しに輝き、切妻(きりづま)屋根の破風板(はふいた)と、四目垣(よつめがき)を引き立てています。切妻とは、家の中心の頂点から左右に傾斜した屋根がつく、日本ではもっとも一般的な屋根形状のこと。その屋根の端を覆う板材を破風板と呼びます。道路沿いに設けられた細長い植栽部には、株立ちの高木を中心に中低木を並べ、さらに足元をカバーする下草を取り入れて、奥行きが狭くても落ち着きのある雑木の庭に仕上げています。 外壁は黒一色の焼杉で 焼杉の板が目を引く外壁。 この住宅の特徴は、なんといっても外壁の焼杉板張りでしょう。庭の設計・施工は造園会社が行ったものですが、じつはこの住宅の設計は、建築家である施主様ご自身によるもの。焼杉と白木のコントラストが和モダンの印象を感じさせるカラーコーディネートに、施主様のセンスのよさがうかがえます。 焼杉は、日本では昔から伝統的に使用されてきた素材です。文字どおり、杉の板を焼いたものですが、酸化することで耐久性が高くなり、焼けていない内部を保護します。焼き方次第で50年はメンテナンスフリーとされる丈夫な素材ですが、できるだけ軒を深くして雨水が外壁に当たらないようにするなど、配慮をすることでより長く美しく保つことができます。ちなみに、焼杉は直接触ると多少手が黒くはなることもあるのでご注意を。 シックな黒の焼杉板と、軒天や垂木など屋根の裏側部分の木材とのコントラストがモダン。 雑木の庭のシンボルツリーと掃き出し窓。 庭のシンボルツリーである株立ちの高木の背後には、リビング・ダイニングと庭とをつなぐ、縦格子が小粋な掃き出し窓があります。この住宅は、ちょうど掃き出し窓の部分がへの字に折れ曲がる形状になっているため、縦格子の入った窓が、それぞれ左右にスライドするというつくり。黒の焼杉板と、明るい木調の建具が、互いを引き立てています。出入りしやすいよう掃き出し窓の前に置かれた沓脱ぎ石には不整形の石板を使い、その左右に大きめの砕石を並べて、和の趣を強調しています。 縦格子の掃き出し窓の前に据えられた沓脱ぎ石と砕石。 玄関へのアプローチ階段も石板で。 道路と玄関ポーチを結ぶのは、大きな石板を使った階段。ポーチ周囲の傾斜を下草で覆うことで、高低差による断絶を和らげ、自然に外界とつながるようにしています。 エジソン電球が照らすエントランスホール 小石を浮き立たせた洗い出しの床がモダンな玄関。 シンプルな木製の玄関ドアを開けると、土壁に囲まれたコンクリートの土間が迎えてくれます。床がコンクリートなので、子どもの遊具も気兼ねなく収納できます。 落ち着きのある輝きを見せるエジソン電球。(画像提供:施主様) 真下から見上げても美しい!(画像提供:施主様) 天井を見上げると、素敵なペンダント照明のエジソン電球が目に入ります。エジソン電球はフィラメント電球とも呼ばれ、透明ガラスの中にフィラメントが光って見えるものです。裸電球という名前でご記憶の方もあるかもしれませんが、アンティーク電球やビンテージ電球などとも呼ばれ、近年、人気が高まっています。こちらの玄関は、以前はエジソン電球風のLEDライトでしたが、明るいもののピンク色っぽくやや不自然だったため、本物のエジソン電球に変更されたそう。「フィラメントのほうが、火に近い明るさで落ち着いた感じがします」と施主様。 室内も土壁に梁と柱が映える和風建築 ナチュラルモダンでシンプルな美しいリビング。 リビング・ダイニング・キッチンをつなげた広々とした室内は、ベージュ色の土壁に木の梁と柱で構成された、すっきりと居心地のよい空間です。リビングは、先にご紹介した縦格子の掃き出し窓を通じて庭とつながり、室内からも庭景色を楽しむことができます。縦格子の大きな窓はデザインとしても美しく、外の風景を取り込んで部屋を明るくしてくれる一方で、窓の前に植えたシンボルツリーなどの植栽が目隠しとなり、外からの視線は遮ることができます。 掃き出し窓からの庭景色。 ヘデラや苔玉のハンギングがおしゃれ。 壁際の梁には苔玉やガラス器に活けたヘデラを吊り下げ、みずみずしいインテリアに。ヘデラはもともと石積みの土留めの植栽などエクステリアに人気の植物でしたが、今ではインテリアグリーンとしても飾られるようになりましたね。 庭に続く開放感が抜群! 庭とリビングをつなぐ建具は全開口が可能なので、遮るものなく庭を眺められ、リビングが一層明るく広々とした空間に。フローリングの床も庭景色に自然になじみ、落ち着きのある印象です。 ダイニングキッチンの天井には木箱のプロジェクターが リビングから見たダイニングキッチン。 シンクとガスコンロ以外はすべて木製で仕上げた統一感のあるキッチン。 キッチンの天板や吊り戸棚など、シンクとガスコンロ以外はすべて木製で仕上げられています。ダイニングテーブルも、もちろん木製。使うたびにきれいに手入れしていれば、経年変化でビンテージな風合いになるのも楽しみなダイニングキッチンですね。 ダイニングの天井を見上げると、直方体の木箱が吊り下がっていることに気が付きます。よく見ると、丸い穴の中にカメラのレンズが。なんと、木箱の中にプロジェクターが仕込んであるのです。 天井から吊り下がる木箱の中はプロジェクター。 じつは、このプロジェクターから映画やビデオをリビングの土壁に映し、大スクリーンで楽しんでいるのです。リビングの壁には、こんな仕掛けもあったのですね! 土壁の縦横比率は、映画鑑賞に最適になるようテレビ画面に合わせたサイズにしてあるという設計者のこだわりも。家族みんなで楽しむホームシアターに変身するリビングなんて素敵ですね。 リビングの土壁はシアターに変身!(画像提供:施主様) 薪ストーブで冬も暖かく (画像提供:施主様) リビングとダイニングの間には、薪ストーブがあります。薪ストーブは部屋を暖めるのはもちろん、寒い夜にパチパチと薪が爆ぜ、揺らめく炎を見つめていると、精神的にもリラックスし、なんともいえない癒やしを感じます。また、一部がすのこ状になった天井から薪ストーブの温もりが2階に伝わって、家全体が暖かくなります。 土壁をベースに、木製のフローリング、建具、柱、梁と、自然素材で構成されたインテリアは、安らぎと潤いを感じさせる住み心地のよい空間でした。 ずっと見つめていても飽きのこない炎。(画像提供:施主様) まとめ 道路沿いの細長い庭も、植栽の高さのバランスをとることで、奥行き感がある雑木の庭に。玄関ポーチへ続く石板の階段の両側には下草を植え、道路と敷地の高低差を柔らかく緩和しています。シックな黒の焼杉板と明るい木材の柱や垂木、縦格子のコントラストで、和モダンなイメージを出すのも素敵ですね。 室内へ足を踏み入れれば、梁や柱を見せたデザインに、温かみのある土壁とフローリングが、飽きのこない落ち着きのある空間を演出しています。明るく開放的な室内は、細部まで細やかなこだわりが詰まった居心地のよい場所。冬場は薪ストーブの上に煮物の鍋やティーポットを置けば、美味しい料理やティータイムを楽しむ、癒やしのひとときを過ごせます。 皆さんも、自然に親しむ新感覚のヒューマンライフを参考にしてみてはいかがでしょうか。 建築設計:一級建築士事務所 アトリエ ユイム吉能雅人庭園設計:長濱香代子庭園設計株式会社 長濱香代子
-
外構事例
【住宅街の庭実例】くつろぎのひとときを緑いっぱいのガーデンで
南欧をイメージした明るい玄関 住宅の玄関前の植栽には、シンボルツリーやサブツリーをおしゃれに取り入れて。 ハンギングバスケットやテラコッタ鉢で南欧風の雰囲気に。 今回ご紹介するのは、神奈川県川崎市の、駅から少し離れた住宅街の角地にある、店舗兼住宅の素敵な庭です。 まず住宅側の玄関を見ると、外壁や門袖のホワイトベージュの色彩をバックに、シンボルツリーのソヨゴと鉢植えのドドナエアが風に揺れ、まるで南欧のワンシーンのよう。ドドナエア‘プルプレア’は別名ポップブッシュともいわれる人気の常緑樹で、冬場は赤銅色に紅葉し、シックな葉色が差し色に。玄関の左上に吊されたハンギングバスケットの赤花が効いて、より地中海風の雰囲気を高めています。 シンボルツリーの足元を彩る植栽。ノリウツギやフイリヤブランなど、色の濃淡や形の異なるリーフプランツを組み合わせて、花のない時期もきれいな景色に。 シンボルツリーのソヨゴは、レンガ1枚分の高さを出した花壇に植栽し、株元は下草でカバー。車輪のような円形のアイアン飾りがポイントになって素敵ですね。下草には白花のノリウツギやフイリヤブラン、黄金葉のハゴロモジャスミンなどが植えられています。白とグリーン系でまとめたシンプルな色彩ながら、葉の形と緑の濃淡で変化をつけた、とてもオシャレな植栽です。 オリジナル花台で室外機をカバー。 玄関横には、こちらも南欧を感じさせる素焼きやテラコッタ風の鉢植えが並びます。 その隣には、白い横板張りの可愛い箱が。じつはこれ、室外機カバー。室外機の通風がよくなるように横板の隙間は広めにし、花台としても活用しながら、見せたくない室外機をおしゃれに目隠ししています。 ちなみに、地中海風ガーデンに欠かせない「テラコッタ・terra-cotta」は、イタリア語で「焼いた土」のこと。陶器やタイルなどの建築材料としても使われます。素焼き鉢とテラコッタ鉢はどちらも粘土で形をつくり、窯で焼き上げたものですが、ガーデニングではより高温で焼いてオレンジ色が強いものをテラコッタとしていることが多いです。釉薬のかかっていないテラコッタ鉢はツヤがなく、素朴な雰囲気。赤褐色や橙赤色などの温かみのある色合いと、多孔質で空気や水分を通しやすいのが特徴です。 店舗側のファサードはいろいろな花々を飾って 道路際の狭いスペースも緑がいっぱい。 お店の出入り口を彩る鉢植えやバラ。 お店のオリジナルなアイアンサイン。 続いて、店舗側のファサードを見てみましょう。庭主さんは、古くからこの町でクリーニング店を営んでいます。そんなお店の出入り口ポーチの両側には鉢植えが並び、地植えのスペースがなくても、植物たちが生き生きとした雰囲気を作り上げて、お客さまを歓迎しています。 リーフを主体にしたシックな住宅側の植栽に比べ、こちらは同じように上品ながら、より花を取り入れてカラフルな印象。お店のオリジナルなアイアンサインも素敵ですね。 緑豊かなガーデンへ あふれ出そうなほど緑が鮮やかな道路沿いの植栽。 縦格子の門扉をくぐった先に広がる緑豊かな庭。 フェンスと門扉に絡む黄色いバラ。 道路に面したガーデンは、5.4×2.7mほどのやや細長い空間です。道路と庭を区切る縦格子のフェンスと門扉が、庭への期待感を一層高めてくれます。暗色の縦格子フェンスには白やレモンイエローのバラが絡み、混ざり咲く紫色の小花と大人っぽいコントラストに。足元を見ると、道路と庭の境界には小さな立方体に切り出したピンコロ石を並べ、花壇はなだらかな弧を描くようレンガで縁取るなど、細部まで凝った上品なデザインになっています。 バラの花壇をエレガントに演出する、ピンコロ石のペイビングとレンガの縁取り。 扉を開けると広がる緑いっぱいの庭 庭の入り口となる縦格子の門扉。この扉にもハンギングバスケットが。 扉の中は植物が満載。 ヴィンテージ調のガーデンファニチャーに白やピンクの花鉢を合わせ、シャビーシックな空間に。 白い水玉の斑入りのリーフが可愛い。 門扉を開けると、目の前いっぱいに緑が広がります。ヴィンテージ調の木製ガーデンファニチャーと、白い鉢に植栽されたピンクの花がベストマッチ。白い水玉やピンクの斑入りの植物のチョイスも、フェミニンで可愛らしいですね。 ブレイクタイムはウッドデッキで ドアのガラスに庭の緑が映り込んで、より一層広がりと開放感を感じさせる。 リビングと庭をつなぐウッドデッキ。 住宅と接する庭の奥には、シェード付きのウッドデッキを設置。ウッドデッキのサイズは4.5×2.7mほど、奥行きは庭の敷地いっぱいまでたっぷり取っています。ウッドデッキを広くすると地植えできる面積は小さくなりますが、デッキの上にもさまざまな形の鉢を並べることで、十分に植物を楽しめるスペースを確保。奥のガラスドアには庭の緑が映り込み、見た目がきれいなだけでなく庭をより広く見せてくれます。 壁やフェンスにマッチするハンギングバスケット ホワイトベージュの外壁に映えるハンギングバスケット。 フェンスにはテラコッタのバスケットを飾って。 ウッドデッキの上にある物干し竿受けや、横張りにしたフェンスには、それぞれハンギングバスケットを飾り、空間を上品に演出。物干し竿受けのハンギングバスケットは、白っぽいベージュの外壁に映える濃いめの色を、ブラウン系のフェンスには明るいオレンジ色のテラコッタのバスケットを選ぶなど、背景の色に合わせて楽しんでいます。 緑に囲まれたウッドデッキで、シャビーなガーデンファニチャーに座り、くつろぎのティータイムを楽しむ…ゆったりとした時間が流れる贅沢なひとときです。また、リビングからの庭の眺めも美しく、家の中に居ながら緑に包まれる潤沢な感覚を味わえます。 実のなる木で小鳥が訪れる庭に 陶製の水鉢は小鳥の水飲み場。 庭の門扉脇にはヒメイチゴの木やジューンベリーなど、実のなる木が植栽され、季節に合わせて野鳥が訪れるのも、この庭の楽しみ。木陰にはオフホワイトの陶製の水鉢が置かれ、鳥の水飲み場にもなっています。こんな庭なら、小鳥たちも大喜びですね。 鳥が大好きな実のなる木たち。左からヒメイチゴ、ジューンベリー、ブルーベリー、ユズ。 まとめ 舗装されて植栽スペースがない場所も、素焼きやテラコッタの鉢を活用すれば、南欧風イメージのガーデンに。シンボルツリーとサブツリーなど、高さの異なる樹木を組み合わせてバランスよくまとめましょう。 エアコンの室外機は、むき出しでは殺風景になりがちですが、DIYでカバーを作ると見栄えがよくなります。木の板を間隔をあけてビス止めし、好みの色で塗装すれば、オシャレな花台にもなる室外機カバーに。板の間隔は3cm程度と広めにとって、室外機からの通風をよくするのがポイントです。 ウッドデッキをくつろぎ空間にしたい場合、日差しの調節ができるよう、シェード付きにすると便利です。落ち着いたアンティーク調の木製ガーデンファニチャーは、実際に座るだけでなく、寄せ植えの花鉢を置く花台としても活躍します。また、フェンスや壁際にハンギングバスケットを飾れば、空間をもっと素敵に演出できますよ。 小鳥が訪れる庭にしたいなら、柑橘系やベリー系の植栽を。陶製などの水鉢を置き、小鳥の水飲み場や水浴び場を確保する工夫も大切です。 ウッドデッキを広く取ることで生まれるリラックススペース。緑に囲まれた空間があると心が落ち着き、くつろいでティータイムも楽しめますよね。 設計施工:株式会社プロトリーフ niwa-kura 渡邉禄明
-
外構事例
【輸入住宅の庭実例】豊かな緑で覆われたナチュラルガーデンを拝見!
個性的なデザインのファサードを彩る植栽 輸入住宅らしい、個性のあるヨーロッパ風デザインのエントランス。 シャープな剣葉を持つユッカやフイリヤブランをレイアウトし、スタイリッシュな雰囲気に。 今回ご紹介する神奈川県横浜市の住宅は、今から40年ほど前に輸入住宅会社で設計・施工されました。玄関扉は、古代ギリシア建築に見られる柱のような装飾が施され、まるでヨーロッパの住宅のような雰囲気。板を水平に重ねながら張り合わせたラップサイディングの外壁は白、玄関扉は淡いペパーミントグリーンと、上品な色彩です。 エントランス前の花壇には、シンボルツリーのオリーブを植え、ポストを設置。シックな紺色のポストと、白い2本のフレームとのコントラストが目を引きます。このエントランスの植栽は、花にプラスして、ディアネラやフイリノシランなど細長い葉を持つ常緑植物を取り入れることで、一年中緑が絶えないようにしています。濃い葉色のユッカは玄関ポーチ脇に、その隣に明るい葉のフイリヤブランを配した、バランスのよいオシャレな植栽です。 リビングのガラスケースにも海外を感じさせるコレクションが リビングから庭を眺める。 エントランスから室内へ進み、リビングから外を眺めれば、開放的な掃き出し窓の向こうに、緑あふれる庭景色が広がります。壁際のガラスケースには奥様が集めたナンタケットバスケットのコレクションや、船のグッズが飾られていて、異国情緒を感じさせてくれます。 ガラスケースには、コレクションのナンタケットバスケットがいっぱいに。 ちなみにナンタケットとは、米国・マサチューセッツ州南東部コッド岬の南、48km先にある島のこと。「遠い島」や「遠く離れた海上の地」を意味するネイティブアメリカンの言葉に由来します。島の伝統工芸品で「世界一美しいカゴ」とも称されるナンタケットバスケットは、手作りで同じものが2つとなく、また籐、オーク、チェリー、メープルなどの素材により、大きく表情が変わるのが特徴です。 バスケットとともに飾られていた、涼やかなシルバーの船のグッズ。 自然の中にいるかのような緑あふれる庭 2階から眺めた庭の全景。中央の植栽スペースをぐるりと囲うように、歩きやすい小径が整備されている。 リビング前のウッドデッキに出れば、伸びやかな緑を満喫できる。 庭の中央には植栽スペースが。奥にはパーゴラも見える。 アジサイ‘アナベル’やカレックスに、銅葉の植物を合わせて引き締め役に。 流木のオブジェ。 リビング前のウッドデッキからは小径が、庭をぐるりと回るように伸び、庭の最奥部に設置された木製パーゴラに続きます。小径を巡らせたことでデザインや歩きやすさなどのメリットはもちろん、植栽や芝生のスペースが制限されて、雑草対策の手間やメンテナンスの負担も減りました。 小径に囲まれた庭中央のスペースには、純白の花を咲かせるアジサイ‘アナベル’や細葉のカレックス、銅葉の植物を植栽。みずみずしい緑にカラーリーフをワンポイントとして加え、庭景色に変化がつくよう工夫されています。 この植栽スペースには、子どもたちが遊び場として楽しむ流木のオブジェも。土留めがなく、小径とシームレスにつながるので、ナチュラル感満載です。 ハンギングや木製ベンチのあるパーゴラ 庭に向かって右側の、レンガタイルを飛び石のようにランダムに並べた小径。植栽スペースとの区切りがなく、緑と一体化するような自然な雰囲気。 庭の最奥に設えられたパーゴラとベンチ。 ハンギングバスケットや鉢植えで彩られたリラックススペース。 小径をたどると、庭の最奥にあるパーゴラに到着。パーゴラの下には、ヴィンテージな雰囲気の木製ベンチが据え付けられ、その周囲にはブッドレアやシルバーリーフなどの鉢植えが。パーゴラからはアンティークな照明やハンギングバスケットが吊り下げられ、リラックスして庭を楽しむのにぴったりな快適空間に。 自然風でメンテナンスも簡単なウッドデッキ リビングと庭をつなぐ掃き出し窓正面にあるウッドデッキ。 手づくり風の小さな鉢植えは、椅子に乗せて観賞しやすい高さに。 リビングにつながるウッドデッキは、じつは天然木ではなく人工木。木粉とプラスチックを配合した人工木は、色も質感も天然木のような風合いを再現しながら、一般に防虫薬品不要で経年劣化も起こりにくいのがメリットです。 ウッドデッキの端にはオリーブの鉢植えがさりげなく置かれ、折りたたみできるナチュラルな風合いのパラソルとともに、地中海を感じさせるようなオシャレな空間が演出されていました。 次々に見所が現れる小径 庭に向かって左手の小径を歩いていくと・・・ 赤いリンゴの実が! 水鉢を覗いてみると、メダカがいました。 パーゴラに向かうもう1つの小径の途中には、鉢植えに真っ赤なリンゴの実がなっていたり、水草の間に可愛らしいメダカが泳ぐ水鉢があったり、歩を進める度に小さな可愛らしい発見が。景色に変化を持たせることで、見所満載のガーデンになっていました。 まとめ 雑草のない、緑の絨毯のような芝生の維持管理は大変ですし、観光ガーデンのように手入れの行き届いた庭づくりは手がかかります。しかし、小径をつくることで雑草が生えるスペースを少なくし、その周辺に自分の好きな植物を植えれば、四季の花の彩りをもっと簡単に楽しむことができます。また、自然なガーデン風景には色合わせもポイント。葉色の濃淡をバランスよく配置すると、庭に変化を生みつつもナチュラルな印象に。赤茶やエンジ色など銅葉のカラーリーフは主張が強いため、一箇所にたっぷりと植えるより、ところどころにワンポイントで植栽して引き締め役にしたほうが、まとまりがよくなります。 流木などのオブジェやガーデンファニチャーも、カジュアルな庭演出に一役買ってくれます。ベンチは座ったりくつろいだりといった実用面はもちろん、庭のフォーカルポイントとしてガーデンデザインのアクセントにもなります。 こんな緑あふれるナチュラルガーデンが暮らしのそばにあれば、毎日が心地よく、穏やかに過ごせそうですね。 設計施工:株式会社プロトリーフ niwa-kura 中田理英子