3. 植物の特性を活かした植栽
植物の特性を活かすことは、これからのくらし空間創造にとって最も期待できる手法といえます。最近全国的に普及した「緑のカーテン」も夏場のエネルギー軽減に大きな成果が出たといえます。くらし空間の中でどのように植物を活かすかは、ただ植物をやみくもに植えるのではなく、植物の理解と植栽の工夫が必要となります。たとえば「緑のカーテン」においてもゴーヤを使用した場合、プランターの大きさによって、日射しを遮りたい窓が2階の場合、小さなプランターでは伸長が届きません。このように、土壌基盤や目的とする活用をよく検討したうえでプランニングする必要があります。(図-1)
概ね考えられる活用目的としては、
1. 夏場の太陽の光を遮り、室内温度を上げないようにする(節電対策)
2. コンクリート面の温度を上げないようにする(ヒートアイランド軽減・節電対策)
3. 垂直緑化による風のコントロール(節電)
4. 緑のパーテーションによる目隠し(セキュリティ対策)
5. 転倒の際の怪我対策(安全確保)
6. 防災、防火の際の延焼防止(安全対策)
などがあげられます。もちろん美しい植栽は、その地域の景観にも影響を与え、キッチンガーデンは自給やコミュニケーションの促進にもつながります。植栽可能な敷地空間にこのような機能的な植栽を出来るだけ多く工夫していくことが望まれます。
(図-1) 植物の特性を活かした植栽イメージ
日射しの高さは、季節により変わります。最も高くなる夏至で、約45度程度と考えると建物の窓から樹木の位置が3.0mで高さが6.0mの樹高の木が必要となります。通常夏場の緑陰をつくる目的の場合は落葉樹を選択します。また、樹木の株元は風通しを良くし、足元の植栽のために適当な高さまで枝を切るとよいでしょう。生垣や周囲の塀などの高さと位置を踏まえて、樹形を整えます。日射しを遮るための緑化と風を通したり、防ぐ植栽は密接な関係にあるので注意が必要です。
1963年兵庫県生まれ。ガーデニングによる花と緑があふれるまちづくりを提唱し指導している。園芸肥料メーカー勤務を通し本格的に植物との関わりを持つ。90年に独立。ガーデニングコンサルタント会社・環境文化センターを設立し、現在に至る。家庭菜園を始める・続けるためのベストガイド『菜園生活パーフェクトブック』の監修・著。