6. キッチンガーデンの応用と活用
キッチンガーデンの演出やプランは、一般家庭だけでなくさまざまな分野で応用できます。とくに野菜は、収穫できれば「食べる喜びと幸せ」を与えてくれます。また、調理とつながるとさらにやる気が出てくるものです。これからのマーケット戦略としても、役立てていくチャンスの時期といえるでしょう。
1. 幼稚園、保育園、各種学校、福祉施設でのキッチンガーデン(社会貢献・学習活動)
野菜づくりは、情操教育をはぐくむなかで大変効果的な活動といえます。普段、食卓に並ぶ野菜がどのように出来てくるのかを学習することは、創造的で、心豊かに生長するための教育理念はもとより、感動や感謝、優しさといった精神的な感性も高めていきます。
また、福祉施設においても園芸療法の柱に野菜づくりがリハビリ効果に大きな影響を与えていることと思われます。共通していえることは、野菜づくりを講師や経験者が知識的に教えるのではなく、子どもたちや患者さんに発見してもらえるように誘うということです。もちろん指導的立場にある方には、多少の野菜づくりに関する知識習得は必要ですが、失敗しながら徐々に進めていく無理のないプランが望まれます。
私自身の経験から幼稚園などではまず教育の現場におられる先生方に、福祉の現場では介護士のスタッフの方々に対してプログラムの作成から定期的に研修会を行うことが望まれます。毎回何か体験的な教材があれば進めていきやすいでしょう。地域貢献にもつながる活動ですので、ぜひ推進したいものです。
介護スタッフの研修会。年間のプログラム作成方法から学ぶ
2. 市民農園での試み(交流・学習活動)
兵庫県 伊丹市内 市民農園
都市近郊の田園地域には、市民農園が増えてきています。今後さらに増えてくることと考えられます。従来からある貸農園とは異なり、設備面の充実だけでなくシステム的なサービスのあるところが人気が高いようです。欧米のクラインガルテンのように、ただ単に野菜を育てるだけでなくコミュニケーションの場であり、収穫された野菜を簡単な朝市のような感じで販売できたり、といった企画もみられます。地域行政や地元農家、農業委員会などとの連携は決して簡単ではありませんが、休耕田の活用は、まちづくりNPOといった公的機関と進めていくのもよいでしょう。交流、社交といった野菜づくりによる仲間づくりはさらに発展していくことは間違いありません。
3. 講習会の開催(顧客サービスの活用)
花づくり講習会として、寄せ植えやハンギングバスケットづくりなどの講習会は各カルチャーセンターや公民館活動で開催されていますが、キッチンガーデンの講習会はありそうでなかなか見当たりません。私自身も地元でシルバーカレッジなどで講師活動をしていますが、野菜づくりの講習になると通例会よりも参加者が増えます。農業を営んでおられる方々からみれば、ごく当たり前のようなことが、野菜を自分で育てたことのない方にとっては、大変新鮮に感じられるものです。
農家の方に親しい方が身近におられたら、ぜひ研修会のスタッフに参加いただけると心強いです。私たちの業界のマーケットを広げていく方法として地道な努力ですが、OB顧客サービスの一環として定期的に野菜づくり研修会をプログラムに取り入れていきましょう。成功事例などを、ホームページやFacebookなどで積極的にシェアしていくことは、必ず業務にはね返ってくると信じます。また、研修会を開催することはスタッフのキャリアアップに最も効果的と考えます。
社内の小さなスペースでもコンテナを使ってまず始めていくことを期待しています。
1963年兵庫県生まれ。ガーデニングによる花と緑があふれるまちづくりを提唱し指導している。園芸肥料メーカー勤務を通し本格的に植物との関わりを持つ。90年に独立。ガーデニングコンサルタント会社・環境文化センターを設立し、現在に至る。家庭菜園を始める・続けるためのベストガイド『菜園生活パーフェクトブック』の監修・著。