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外構事例
【実例拝見】高低差のある外構が劇的変身! “古い門まわり・アプローチ”が見違えるファサードリフォーム実例
家の第一印象を決める“門まわり”を明るい印象に変身! 明るくきれいな印象になったリフォーム後の門まわり。 門まわりは来訪者が一番初めに目にして立ち寄る場所。住宅の印象を決めるには、ここに立ったときに、気持ちのよいところにすることが大切です。 Before。 リフォーム前は階段や塀が、経年によって暗いイメージになってしまっていました。そこで、階段をベージュのタイル張りに、塀はそれより明るい色に吹き付け塗装で塗り直し、門柱のレンガはクリーニングで綺麗に。リフォームにより、とても明るく清潔感のある雰囲気に生まれ変わりました。 門柱の後ろのゴミ置き場。 門柱の後ろにはゴミ置き場スペースを用意。リフォーム前は門柱前にゴミ袋がありましたが、ここに隠せば見栄えもよく、忙しい朝にも以前よりも短い導線でゴミ出しをすることができますね。 階段・アプローチの色を変えるだけで「広く見える」空間に 色調が明るくなった階段は、広々と感じられるように。 Before。長年の汚れで黒っぽく変化した階段。 門扉を開けて右手の階段も暗い印象でしたが、30cm角のベージュのタイルと、それよりも明るい色の吹き付けの塀にリフォームされて、明るく広い印象へと一新。塀で囲まれた狭い階段は、明るい色でまとめることで、空間を広く感じさせることができます。道路からエントランスまでの高低差がある場合は、老後や介護など将来の問題も考え、手すりを付けておくこともよい工夫ですね。 曲線×乱形石のアプローチで奥行きと遊び心をプラス 玄関扉へ続くアプローチは乱形石張りで。 階段をのぼると現れる、エントランスに向かうアプローチは、単調にならないように乱形石張りに曲線を用い、柔らかいイメージに仕上げています。シンプルな階段のイメージをそのまま延長させることなく、変化のあるデザインにすることで、来訪者が周囲の植栽を眺めながらエントランスに向かうことができ、奥行きのある風景に。また、石張りのアプローチをブラウン系の濃淡のあるタイルで縁取ることで、遊びのあるラインが際立ち、楽しい雰囲気が一層感じられますね。 曲線を描くアプローチに乱形石張りで、おしゃれで変化のあるデザインに。 Before。土間コンクリート洗い出しに直線のシンプルなアプローチ。 異素材をつなぐ「見切り」がデザインのワンポイント アプローチ床と階段との境界はレンガタイルで引き締め。 乱形石張り仕上げのアプローチと階段のタイルの間には、レンガ色のタイルを1列ボーダー状に入れています。異なる素材をつなぐ部材は「見切り」と呼ばれ、硬い階段と柔らかい乱形石張りのように、仕上げの違う部分をまとめやすくするのによい方法です。また、乱形石とタイルはどちらもベージュ系の色で、色や明るさの差があまりありません。こうしたケースでも、両者よりも少し濃い色のボーダーを入れることで、全体を違和感なく引き締めることができます。 エントランス前にも収納の工夫が 乱形石張りのアプローチを進んでいくと、エントランスポーチと繋がります。エントランスポーチには奥様のお気に入りの鉢物を置いて、玄関前を明るく演出。ポーチの横には、目立たないようにゴミ箱置き場のスペースを設けてあり、暮らしの中で使い勝手がよいよう細かな配慮がされています。 失敗しない外構リフォームのポイント3つ 住宅やエクステリアのリフォームを行うにあたり、私の経験上でのポイントは次の3つです。 1.滑りにくい素材を選ぶ アプローチや階段は、タイルや石張りの表面がツルツルの素材は避けましょう。一番気を付ける素材は、石の磨き仕上げ。雨などで濡れていると、滑って転ぶ危険があります。表面がざらざらしている素材が安心です。また、余談ですが、大理石は雨水で風化が早くなるので、屋外に使うのは避けるのがベターです。 2.楽しめる動線を考える 門まわりからアプローチやエントランスに向かう動線は、直線ではなく、来訪者が左右を眺めながら緑や花々を眺められるようなゆとりを持ったプランにすることで、潤いや安らぎのある空間になります。最近では緑の多いアプローチが人気。ガーデンセンターにはアプローチを彩るのにぴったりの花鉢などがたくさんありますので、ぜひチェックしておきましょう。 3.色選びで広く見せる 狭い空間では、暖色系の明るい色で構成することで、多少ながら広い印象を作ることができます。足元の下草やグラウンドカバーの葉の色を明るい色にするだけでも、敷地を広く見せるイメージ効果が生まれます。 カラーデザインの効果を実感! 3色のボーダー(セパレーション)で全体のイメージを変える リフォームデザインの参考として、メインとなる2色の間をつなぐ色彩にブラック、グレー、ホワイトのボーダーを入れたときの、それぞれのイメージの違いを見てみましょう。 *CADパース:オーセブン株式会社 a.ブラック:全体を引き締め 門扉や手すりは、住宅のサッシの色と同じブラックにすると高級感が生まれます。住宅の外壁がブラウンの場合は特に効果が生まれます。 b.グレー:柔らかいイメージに 2色の間をグレーでつなぐことで境界があいまいになり、柔らかく見せることができます。 c.ホワイト:清潔感を演出 白を入れると清潔感が出て、爽やかで綺麗に見せることができます。 まとめ エントランスまでの道行きを彩るアプローチ脇の花壇。 近年、住宅とエクステリアのリフォームをする人が増加中。住宅本体をリフォームするだけでなく、門まわりやアプローチもリフォームして、敷地全体をきれいにしていくことも暮らしの質向上に重要なことですね。 今回の門まわりのリフォーム事例を参考に、毎日の生活が清々しくなるリフォーム計画をしてみてはいかがでしょうか? 設計施工:ヘブンズガーデン 常盤祥平
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外構事例
【実例】縁側のある庭|飛び石・垣根・苔で魅せる追憶の和風庭園
庭の背景―“京都の風景を、毎日の視界に” 施主様の依頼は和の趣の庭。奥様と京都を何度も旅されたというお話を伺い、その記憶がふとよみがえる風景を目指し、最も長く過ごす居間に主庭の風景を据えました。縁側に出て季節の空気を感じられる場所を確保。動線は短くしつつも、視線は豊かに深く導く、設計が見どころです。 “見せて隠す”入り口の四ツ目垣 公道から240cm程度奥に下がったところに、境界として、四ツ目垣を設置。垂直に立てる「立て子」と、水平に渡す「胴縁」で方形の透かしをつくる伝統意匠は、庭の飛び石や景石をほのかに見せ、和の情緒を高めます。 四ツ目垣の透けた向こうに飛び石や景石が見える。 駐車場のこげ茶色の立て格子で手前の四ツ目垣根が引き立つ。 四ツ目垣の名称の由来は、透かし模様が四角形に見えることから。茶の路地庭園には欠かせない仕切り垣とされています。実はこの四ツ目垣の竹は、樹脂でつくられた人工の竹で、シュロ縄で結んでつくっています(合成竹垣材料 こだわり竹®・エコ竹 タカショー)。 竹のしなやかな素材感を再現しつつ、屋外耐候性と耐久性を両立します。 道路から右手に駐車場がありますが、ここにはこげ茶色の立て格子が使われており、四ツ目垣の明るい色が際立ちます。 飛び石や延べ段のアプローチ 飛び石を歩きながら左右の景石や植栽を眺める。 四ツ目垣の間を抜けると、白砂利に飛び石、苔の築山、延べ段が連なります。ここは歩いて味わう序章の庭。 飛び石は昔、着物で歩くことから、歩幅を40cm前後でしたが、今では現代の歩幅に合わせて、40~60cm程度に設定。 飛び石と延べ段、コケの築山の共演。 飛び石を踏んで歩みを進めると、右手は四ツ目垣、足元はコケ、左手はこんもりと盛り上げた苔の築山に、アオダモの株立ちが。飛び石と延べ段の組み合わせも日本の芸術を感じさせるデザインです。 主庭の構成は紅枝垂れを核に、建仁寺垣で背景を整える 建仁寺垣のある和風庭園。 主庭は紅色の紅枝垂れ(ベニシダレ)を核に、左右に植栽を配置。建仁寺垣のアイボリーよりの黄色と植物の色彩構成が見事。 地面は白砂利と苔の緑、要所に影石と飛び石を置き、居間から眺める風景として過不足のない風景に。単調になりがちな奥行き方向は、樹高差と色の重ね、コントラストで抑揚をつけました。 メンテナンスなしで長持ちする建仁寺垣 経年劣化に強い人工竹垣(エバーバンブー)。 じつは、この建仁寺垣も樹脂でつくられた竹垣で、内部はASA系樹脂で耐候性、耐熱変化、耐退色性に優れ、表面はABA系樹脂で、機械的衝撃強度の高い樹脂です。著しい変色や割れについては、5年保証といわれていますが、10年でも長持ちするようです(エバー2型セット【エバー建仁寺セット】タカショー)。 建仁寺垣とは、京都の建仁寺に由来する最も一般的な竹垣の一種で、割竹を垂直に隙間なく並べ、半割の竹を押縁にして水平に並べ、シュロ縄で結んで固定しています。 奥からお庭を眺める 手前のノムラモミジの植栽で生きる遠近感。 灯籠、筧、手水と景石。 庭の一番奥まで進み、振り返ってみると、手前のノムラモミジの向こうの背景の奥行き感が見事です。ベニシダレの脇にある灯籠、筧、手水(ちょうず)の配置バランスも絶妙。正に和風庭園の象徴で、飛び石の並びで手水(ちょうず)に向かう動線をつくっているところがポイントです。 濡れ縁と飛び石。 自然で趣のある延べ段。 右手には濡れ縁に行く段差の工夫や、帰り道になる瓦をはめた延べ段など、石の並びが和風満載の趣を感じました。 出口に向かうまで退屈しないアプローチ 足元の飛び石周辺の植栽や景石。 帰り道の飛び石廻りの景石と、下草の配置具合やコケと細かい白砂利の境界の曲線が柔和なイメージ。 歩きながらの眺めは飛び石の配置で。 出口は直線で抜けず、右手に大ぶりの景石を据え、飛び石を左から右へ、大きく曲げることで歩速を緩め、見送りの景色を演出。 苔と白砂利の柔らかな曲線境界、点在する下草が視線を拾い、最後まで退屈させません。 まとめ 和風庭園は竹垣、砂利、飛び石、延べ段、景石や、植栽の配置具合で、趣のある雰囲気が生まれ、落ち着きや安らぎを感じる庭になります。 灯籠や筧(かけい)、手水鉢(ちょうずばち)を設置することで、和風庭園のイメージが強調されます。この現場事例では築山をコケにしていますが、タマリュウやシダ類を植えている例や、延べ段も、デザインバリエーションは豊富です。 また、植栽もマツなどの針葉樹やイロハモミジなどの紅葉がキレイなものなどさまざま。メンテナンスの労は少なく、四季ごとに穏やかに変わる風景を楽しめるのが和風庭園の魅力。ガーデン計画の選択肢の一つとしておすすめです。 設計施工:帝樹園 庭正 長橋正宇
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外構事例
アンティークテイストの参考に! 愛犬と一緒に入れるおしゃれなカフェの外構&内装デザインアイデアを拝見
レトロな外観デザインが目を引くカフェ 焦げ茶色をベースにしたレトロな雰囲気のファサード(建物正面)。 これまでいろいろなエクステリア現場を取材してきましたが、カフェ「GAKU NO TOBOE」は極めて珍しい外観デザインです。建物全体の大部分を占めるベースカラー(基調色)はこげ茶色で、アクセントカラー(強調色)としてベージュの石壁を中央付近に配置。全体がこげ茶色の中に、明るい石壁のコントラストが効いています。この石壁、目地がないことを不思議に思って施工担当者である「ヘブンズガーデン」の宮元健太さんに尋ねてみると、「じつは、90×240cmの1枚の紙のように薄い石材を張り付けているので、目地が入っていません」とのこと。石の質感があり、ベージュの中にもいろいろな色が微妙に混ざり合っているので単調になりません。 鎧戸のような壁や窓の桟など、デザインを構成する要素がじつにレトロ。 石壁の左右両側にある鎧戸のような壁、さらにその隣の白目地の黒いタイルが印象的な腰壁に、ガラスのようなポリカーボネート素材の窓にかかる桟のレイアウトなど、全体的にどこか懐かしいレトロ感満載なデザイン。 ポリカーボネートは、ガラスの約200倍以上、アクリル樹脂の約50倍以上もの割れにくい「耐衝撃性」、マイナス40℃~120℃という幅広い温度範囲で使用可能な「耐熱性」、燃えにくい「自己消火性」、紫外線に強い「耐候性」を備えたエンジニアリングプラスチックです。ガラスのように透明性のあるもののほか、半透明の素材もあり、カーポートの屋根などにもよく使われます。 水平に渡した黒いフラットバー(平鋼)がポイント。 また、縦板張りの部分には黒いスチールのフラットバーを設置し、レトロ感を強調しています。 花壇やステンドグラスでアクセントをプラス 黒タイルの花壇(写真左側)。 店舗の横はご自宅のエントランス前になっていて、ここには黒タイル×白目地の花壇が設えられています。花壇は、店舗正面の黒タイルで仕上げた腰壁と同様な仕上げで、統一感をアップ。花壇の背景となる壁面は、こちらも店舗正面と合わせた縦板張りで、上部にはステンドグラスも取り付けられています。全体の構成として、日本住宅のように、濃いこげ茶色の梁や柱をデザインの中心に据えていることがイメージを引き締め、まとまりを生むポイント。この構成も、レトロ感を演出している源のようですね。 柱の下部には何やら小さな丸が…。 施工会社名の入ったエンブレムを発見。 花壇の背景にあるこげ茶色の柱の足元を見ると、丸い何かが貼ってありました。近づいてよく見ると、施工会社のエンブレム! 施工会社名を表示するのは設計施工に責任を持つという意味もありますが、この社名エンブレムはそれだけではない素敵さ。こうしたエンブレム1つとっても、会社としてのセンスのよさを示す大切な要素です。 落ち着けるテラス席は愛犬と一緒に まるで室内のようなテラス席のスペース。 出入り口の扉のすぐ前がテラス席。 続いて、店内のデザインを拝見。入り口の扉を開けると目の前にあるのは、ドッグエリアでもあるテラス席です。壁があり、座席によっては仕切りもあるので、テラスでありながらも室内のように落ち着いた雰囲気。愛犬も一緒に入れるので、お散歩途中に寄るには最高のスペースですね。天井部分は屋根ではなくシェードを設置しているため、柔らかい光が入ってきます。外観同様に、縦板張りや鎧戸風のデザインがされた壁は、ポイントとなる柱で切り替えられています。 内側から見るステンドグラスは、光を透かしてひときわ鮮やか。 レトロなブラケットライト。 この場所にしっくり馴染む額縁の絵も素敵。 この空間を彩るのは、赤、紫、青色に輝くステンドグラスや、レトロデザインの壁に取り付けるブラケットライトなど。額装された素敵な絵も飾られています。どこを見てもとってもおしゃれで、つい長居したくなりますね。 仕切りがあるので愛犬も安心してくつろげるデザイン。 店内はアンティークな素敵デザインが目白押し! 店内の窓や船の置物など、どこを切り取っても素敵な装飾の数々。 テラス席の奥は室内エリア。明るいベージュベースの壁紙にこげ茶色の腰壁の組み合わせがシックで、天井に目を向ければこげ茶色の化粧梁や垂木が印象的な、落ち着いたデザインです。窓にはめ込まれた繊細なステンドグラスが美しく、立派な船の置物と相まって、瀟洒な雰囲気を作り上げています。 入り口付近に灯るアンティークなシャンデリア。 店内の全てのインテリアは、色とデザインの方向性が統一され、選び抜かれた空間演出がされています。 オーナーのご厚意で、特別に厨房出入り口を見せていただきました。厨房はまるで外国のお店みたいですね! 小さな扉を開けると… なんと照明のスイッチが! ここで、壁の一部にこげ茶色の小さな扉を発見。取っ手がついているので開けてみると、なんと照明のスイッチがありました。このケースはオーナーのDIYとのことですが、スイッチを隠すことで空間の完成度がより高まりますね。また、テイクアウトメニュー板も、ワインのコルクを並べたベースにメニュー板をつけたオリジナルなデザイン。小物一つひとつにオーナーのこだわりを感じました。 テイクアウトメニュー板もとってもオシャレ。 まとめ ペット同伴可の飲食店は以前に比べれば増えましたが、それでもペット家族数から比較するとまだまだ少ないのが現状です。 今回ご紹介したカフェ「GAKU NO TOBOE」は、そんな貴重な飲食店。店内は明るいベージュをベースに、こげ茶色をアソートカラー(配合色)として腰壁や化粧梁、垂木に採用し、ブラケットライトやステンドグラス、素敵な絵を飾って、一貫してアンティークなインテリアの雰囲気を作り上げています。 そして外観であるファサード全体とインテリアのようなテラス席には、店内のイメージをそのまま反映し、統一感のあるデザインに。壁面の仕上げは縦板張り、鎧戸風、白目地の黒タイルなど、いくつかのパターンが使われていますが、カラーの明るさを統一しておくことでまとまりのあるデザインになります。アンティークなデザインに興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください 「GAKU NO TOBOE」は、アルゼンチンの国民的な料理「エンパナーダ」が美味しいお店です。「エンパナーダ」はスペイン・ポルトガル発祥で、中南米や北米などで広く食べられる料理。アルゼンチンでは主食として親しまれています。小麦粉の生地に鶏肉や牛肉、野菜などを包み、焼いたり揚げたりしたもので、大きめの餃子のようなイメージです。アルゼンチン料理を食べたい方は、住宅街の一角にあるお店に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか? ※営業日と時間はHPで要確認。GAKU NO TOBOE -がくの遠吠え-gaku-no-toboe 設計施工:ヘブンズガーデン 宮元健太
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外構事例
【庭実例】和と洋、2つの庭が共演する住まい──眺めて癒やし、出て楽しむ贅沢空間
緑の舞台が広がる、小さな庭の大きな奥行き 玄関を中央に、左右に和の庭と洋の庭があるM邸。和の庭は、奥の塀に向かって高くなる法面にしているため、実際は6畳程度ですが、よりゆったりと広く感じられます。この法面はカモシゴケやスナゴケなどの複数のコケ類で青々と覆われ、足元から立ち上がる木々や景石を引き立てる柔らかな舞台となっています。 樹木は3種。左奥に株立ちのアオダモ、その手前にコハウチワカエデ‘関の華厳’、右に枝垂れモミジ。これらを不等辺三角形に配置し、なおかつ樹高に差をつけることで、限られた空間の中にも奥行きと動きが生まれ、目に心地よい自然な景観が広がります。 コハウチワカエデ‘関の華厳’。葉の形に特徴がある園芸品種で、従来のコハウチワカエデよりも雄大な樹形をしている。 高木、中木、低木を不等辺三角形に配植する方法は、庭園で用いられる伝統的な「真・対・添え」の構成で、視線を奥へと誘導し、庭全体に奥行きと豊かな表情を与えてくれます。この美しい形を維持するために、植栽の定期的な剪定は欠かせません。 庭にアートを宿す六方石と、新潟の名石・八海石 和庭の骨格を形づくるもう1つの要素が石。ここでは上部を磨き上げた六方石が、自然が彫り出した彫刻のような存在感を放ち、庭の個性を決定づけています。六方石とは、溶岩が冷えて収縮する際に形成される、五角形や六角形の割れ目を持つ柱状の火山岩で、硬質で規則的な形状が特徴です。その美しい造形は庭園において、門柱や景石、縁石、飛び石など幅広く活用されてきました。 鏡面に葉影を映す六方石。夜間はここに光が反射するようにライティングもセットされている。 モミジや苔の柔らかな表情の中で、直線的なフォルムが際立つ六方石。その磨かれた石面には季節ごとの枝葉が映り込み、庭に格調と四季の趣を添え、アートのような景観をつくり出しています。 また、この庭では八海石も用いられています。八海石とは新潟県魚沼市を流れる魚野川の下流で採れる硬質な自然石で、青みや緑みを帯びた濃い黒色が特徴です。苔や植栽の鮮やかな緑と対比して、庭に深い落ち着きと重厚感を生み出します。地元ならではの石を取り入れることで、庭は土地の風土とより強く結びつき、新潟らしい景観を体現しています。 延べ段から水栓まで、石が支える機能美 玄関アプローチから見た和の庭。 そして、アプローチにはサビ御影石と和良石のゴロタを組み合わせた延べ段を設け、自然石のボーダーが足元から庭全体を柔らかく引き締めています。 さらに機能面にも石を生かした工夫があります。例えば、集水桝はピンコロ石で囲ったコの字形の中に景石を重ねて隠し、点検口であることを感じさせません。 景石の下には集水枡のフタ。 また、庭の角には住宅の石張り調の立水栓と水鉢を設え、実用性を損なうことなく庭の雰囲気に自然に溶け込ませています。生活に必要な設備さえも「石の造形」として表現されている点に、この和庭の完成度の高さが感じられます。 延べ段の色に合わせたサビ色の立水栓。 塀で庭は見違える。煤竹風の演出 庭の背景を形づくるもう1つの大切な要素が、塀の壁面です。一見すると、この庭は竹の遮蔽垣に囲まれているように見えますが、じつは煤竹風の板張り。既存のブロック塀を活かし、庭の背景となる内側にのみ表面に煤竹風の板(エバーアートボード建仁寺すす竹・タカショー)を張り付けています。 既存ブロック塀を生かして内側のみ板張りを施工。 もし背景がブロック塀のままであれば無機質で味気ない印象になってしまいますが、内側を煤竹風の板張りにすることで庭全体が和で統一され、緑が一段と映えます。仮にブロック塀を壊して本物の遮蔽垣を一から組むには高度な技術と時間、そして予算が必要になりますが、アートボードを用いることで工期やコストを抑えつつ、庭に十分な品格をもたらすことに成功しています。 アオダモの後ろにある電柱も、すだれを巻いて目立たないように工夫。 塀は庭にとって単なる境界ではなく、景観の背景を支える重要な要素。ここでも「実用と美観の両立」が巧みに図られているのです。 外に出て楽しむ、もうひとつの居間 次に「洋の庭」を見てみましょう。和の庭とほぼ同じ広さですが、和の庭が室内からの眺めを主眼にしているのに対し、洋の庭は外に出て楽しむ「アウトドアリビング」として設計されています。そのため床は歩きやすいピンコロ石の敷き詰めとし、腰掛けにもなる石積みオブジェを備えるなど、外で過ごす時間を心地よくする工夫が施されています。 扇形の床と石積みが演出するモダン空間 黒のピンコロ石は扇形に敷き詰めることで、広がりを演出しつつ、リズム感とモダンな雰囲気も生み出しています。高さを抑えた2組の石の小端積みは、オブジェのように庭のアクセントとなりながら、ベンチとしても使える実用性を兼ね備えています。 ピンコロの曲線に沿って配したモミジやコケと、直線的な石積みとの対比が美しく、和と洋が響き合う折衷的な空間になっています。 住宅窓際の足元は、沓脱石のみでなく、黒いピンコロの際をゴロタや植栽で自然風にデザイン。 ダークカラーの背景が引き立てる緑と高級感 「洋の庭」でも背景は既存ブロックを生かしながら、板張りを用いることでビジュアルの質を高めています。この庭は思い切ってマットなダークブラウンの塀に。濃い背景色が植栽や苔の緑を一層引き立て、庭全体に高級感とモダンな印象をもたらしています。単なる囲いを超えて、庭の舞台装置として大きな役割を果たしています(塀仕上げ:エバーアートボード ラスティコッパー:タカショー)。 緑の額縁に収まる星空 「洋の庭」は奥様の希望で「星を眺められる庭」として設計されました。庭の四隅に植栽を配置して、緑の額縁の中に夜空を切り取る工夫がされています。昼は青空が、夜は星々がその額縁の中に収まり、まるで1枚の風景画のよう。足元照明も配され、安心感とともに非日常のひとときを楽しめる空間です。 2つの庭が奏でる、異なる魅力 M邸の庭は、玄関を中心に左右でまったく異なる世界が広がります。室内からの眺めを主とした和の庭は、苔むした法面と石の存在感が生み出す静謐な空間。一方、戸外で過ごすことを目的にした洋の庭は、モダンな石敷きとベンチ、そして星空を楽しむ仕掛けが、アウトドアリビングとしての開放感を与えてくれます。 2つの庭は、用途も表情も異なりながら、共通して「石・緑・背景」の調和によって完成度を高めています。和と洋の異なる魅力がひとつの住宅に同居するMは、庭づくりの可能性を広げ、日常に豊かな変化をもたらす好例といえるでしょう。 設計施工:帝樹園 庭正 長橋正宇
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2025/12/01 大阪府 株式会社ラウンド・スケープ・グリーン
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