1. 植物選択の考え方
街並みの景観に調和したニセアカシア‘フリーシア’
(英国 ロンドン郊外)
ガーデンの植栽計画を立てる上での植物選択は、大変重要な項目です。植物の組み合わせによって、その空間は全く異なった雰囲気になります。
また植物の種類からみても組み合わせ方により無限の植栽デザインが創造されます。そして植物は植栽された場所で成長していくため、正に生きたデザインといえます。
四季それぞれに変化していく植物たちは、時には花を楽しませてくれたり、芳香で季節を告げてくれます。植栽の計画において一番に考えることは、そのガーデンの経年変化です。
つまり、植栽される植物たちの育つ環境はとても重要なポイントと言っても過言ではありません。近年、屋上やベランダ、テラス、室内などの特殊空間で人工地盤を造り植栽することが急激に増えてきています。地面での植栽とは異なり多くの規制や条件が発生します。
したがって、植物の特性と建築物の環境条件をよく理解チェックし選択する必要がでてきます。今後全国的に都市部を中心に多くの植栽事例がなされてくるなかで、より有効的な植物のリストアップが期待されます。
環境の改善が身近な生活空間で叫ばれる現在、植物たちとの共生は大きな役割を担っています。ただ単に植栽されるのではなく、その植物の特性を活かしながら健全育成させていくことが必要条件となります。
2.使用目的別による植物の分類について
植物の特性や性質を事前によく理解しておくと、植物たちによるより美しい環境創造を成功させることになります。
非常に多くの植物の中から選択していくのですから、プランナーにとっては大変な責任作業となります。
そこで、植物たちを使用目的によるグループで分類しておくと、わかりやすく設計を進めていくことになります。
ベテランの植栽プランナーになってくると、経験に基いた独自のノートを整理しておくのもよいでしょう。
欧米のガーデンデザインに関する書物をみると、使用目的別に出版された専門書をよく見かけます。
辞典やガイドブックで植物を調べた際には、必ず説明されている植物特性をチェックしておきましょう。
3.植栽計画における植物の選択要素
植物を選択するためには、7つの要素が考えられます。
それぞれの要素は、植栽空間のコンセプトに直接関係することになるため、計画の指針となります。
植物を選択する際に、異なった要素(視点)でチェックしてみるとわかりやすく整理されていきます。
例えば、デザインの視点で選択した樹木がその環境に合っているかはとても重要なチェックになります。
その空間においてより重要な植栽ほど要素分析は欠かせないといえます。
- 文化的要素…それぞれの植物が持つ意味、シンボル性や人との関わり、歴史的 背景など。
- 景観的な要素…樹形、花や葉の色彩などのデザイン性で、視覚的な要素です。
- 合目的要素…植物が植栽するエリアの目的に合致しているか否かで、緑化の必要性に関わります。
- 環境的要素…温度、光、水などの植物が生きていくための必要条件です。
- メンテナンス的要素…植栽後の管理体制レベルに合わせた計画は、経年変化をみていくなかで重要な要素です。
- 社会的要素…人と人、人と植物の共生を配慮したビオトープの考え方で、周辺環境との調和が大切です。
- 機能的要素…遮光、浄化、防災対策や安全性、プライベートの保護など植物の持つ特性をうまく活かしていきます。
1963年兵庫県生まれ。ガーデニングによる花と緑があふれるまちづくりを提唱し指導している。園芸肥料メーカー勤務を通し本格的に植物との関わりを持つ。90年に独立。ガーデニングコンサルタント会社・環境文化センターを設立し、現在に至る。家庭菜園を始める・続けるためのベストガイド『菜園生活パーフェクトブック』の監修・著。