1. 野菜・ハーブ・フルーツを活用したガーデンづくり
キッチンガーデンの演出
(ニュージーランド オークランド住宅)
最近の園芸業界の植物動向をみると、急激に野菜苗・ハーブ苗・フルーツ苗の需要が伸びています。社会の情勢に加え、ガーデニングの人口が増えている現れといえます。
美しい花やガーデンの景観を楽しむだけでなく、くらしの食文化でもあるキッチンガーデンは、私たちに喜びを与えてれます。
自分で育てて、食したり、ポプリやお茶にするといった楽しみは女性の楽しみだけでなく、男性にも人気があります。夫婦でキッチンガーデンを楽しむ姿は、とても素晴らしい生活スタイルです。
さて、キッチンガーデンの植物自体の素材は、一般の方が自分でガーデンセンターや園芸店で購入するため、造園に携わるプロにとっては、あまり直接的には関係ないように思われがちですが、実は逆で、チャンスといっても過言ではありません。
つまり、プロの役割はキッチンガーデンを楽しむためのベースを造るということが重要だからです。ガーデンの枠組み、フィールドの場所、排水や汎用性など全体のガーデン計画やリフォーム計画の中では、理解しておかなければなりません。
欧米のガーデンセンターでは、専用の縁取り(エッジ)や小さな収納倉庫、育苗用の小さなハウス(温室のようなもの)など、キッチンガーデンに必要なグッズが充実して販売されています。
ベランダでもできそうなハーブ演出
(英国 BBXCカガーデンショ−)
日本においても戸建の住宅だけでなく、ベランダやテラスなどの狭いスペースをうまく活用した演出が、今後も増えてくることでしょう。
また、くらしのガーデンにおいて野菜、ハーブ、フルーツはそれぞれ異なるガーデンとしてとらえる必要はないので、通常の花壇やボーダーガーデンにもハーブやフルーツを積極的に選択していくのもよいでしょう。
欧米のガーデニングには、コンパニオン・プランツという概念があります。この考え方は、ぜひ採用していくべきことです。コンパニオンとは「仲良し」という意味です。
例えば、キッチンガーデンの花壇の縁取りに、線虫の発生を抑制するマリーゴールドを一緒に植えることにより、病害虫の対策になります。また、ラベンダーの芳香に蚊が寄りにくいことは人にとってありがたい効果といえます。
このように、植物が他の植物や人に対して効果をもたらす植物をコンパニオン・プランツと呼びます。
異常気象や生態系のバランスが崩れたことから、都市部を中心に住宅エリアに至るまで、病害虫が蔓延してきています。薬で処理していくことも時には必要ですが、食に対する安全性の問題から野菜やフルーツのように直接口にするものは、できるだけ化学薬品は避けたいという考え方がかなり普及してきています。
一般にオーガニック農法や有機農法といわれることで、これからの造園分野でもこのことは意識していく時代です。
1963年兵庫県生まれ。ガーデニングによる花と緑があふれるまちづくりを提唱し指導している。園芸肥料メーカー勤務を通し本格的に植物との関わりを持つ。90年に独立。ガーデニングコンサルタント会社・環境文化センターを設立し、現在に至る。家庭菜園を始める・続けるためのベストガイド『菜園生活パーフェクトブック』の監修・著。