南アジア最大の国土面積と10億人超の人口を有するインドは、古代から石窟などの仏教美術やタージマハルに代表される優れた石材文化を築き上げてきた。その類ない石材の製造・加工技術力を現代に生かし、新機軸の石材リモデルに取り組んでいるのがグラバーである。本稿では同社の突出した天然石の販売・リモデル受注の手法にスポットをあてる。
ショールーム型旗艦店でリフォームの価値と
技術力の高さを知らしめる
ピエール・ミネラル・グループは2009年、ニューデリーに天然石の販売・リモデル拠点となる旗艦店グラバーをオープンした。フロアスペースは約450m²。
花崗岩、大理石、オニックス、石灰岩、砂岩、トラバーチン(虫食い状のくぼみを持つ大理石の一種)を中心とした従来製品のプレゼンテーション・エリア、リフォームの実際をルーム形式で確かめられるデザイン・スタジオ、あらゆるリフォーム相談やソリューションに対応する顧客サービス・ゾーンという連続した三つのゾーンから成り立っている。
最大の特徴は、グラバーを訪れれば同社の取り扱う天然石の幅広いレンジと品質、加工技術、石材に関する専門知識の高さ、快適性やスタイルに合わせたリフォーム提案の全てが体感できる点である。例えば、プレゼンテーション・エリアの花崗岩のディスプレイは可動式であり、白・赤・黒・淡いピンクなど多様な色と石質を目で見て確かめることができる。
また、デザイン・スタジオでは実際に美しく磨かれ、壁面や床に加工されたリフォーム後の完成されたデザイン性、緻密で硬い花崗岩を見事に加工できる同社の技術力の高さを体感・認識することができる。
同社のCEOであるサミエル・リアラ氏は「グラバーは我々の採石加工技術、リモデルのノウハウの全てを1つのフロアに具現化したもの」と胸を張る。
同社のリフォームは、コンクリート・プランニングからのフローリング貼りや壁面のクラッド、ブロックやタイル施工、テーブルトップやカウンタートップの付け替え、暖炉、屋内外のベンチやモニュメント、アートなど、急拡大する豊かな中産階級を狙ったものである。
これまで空港、ホテル、大学等のインターナショナル・プロジェクトを手がけてきたピエール・ミネラルであるが、総力を結集したグラバーを拠点にインドの一般家庭のリモデル攻略を図っていく。今後、出店は2015年までに50店舗以上を計画。
まさにグラバーからリテール・イノベーションが萌芽し、新たな石材リフォームのトレンドが世界に発信されようとしているのである。
納得のオーダー・プロセス
グラバーのショールームは150もの幅広い天然石のレンジと多様なカラ—、フィニッシュ、エッジを取り揃えているため、顧客は豊富なサンプル・コレクションの中から実際に見て確かめた好みの石材・家具等を選択できる。
効果的な照明下で陰影に富んだ石材の魅力や、落ち着きのある室内空間づくりのノウハウを学ぶことができる点も多くの顧客を引き付けている。
無論、石材に関する説明やリフォーム相談は、店内にセッティングされたダイニングルーム、バスルームのディスプレイを見ながら同社の訓練された営業スタッフとデザイン・コンサルタントが担当する。ディスプレイ・アイテムは現代生活にマッチするバラエティに富んだ日用使いの商品で構成されているため、顧客への説得力は極めて高い。
さらに、受注の切り札になっているのは、顧客サービス・ゾーンに設置された双方向のタッチスクリーン・パネルである。顧客はソファでくつろぎながら前面の大型スクリーンに映し出されたキッチンやバスルームの映像に、自分の好きなカウンタートップや床の石材をあてはめ、施工後のイメージを何度でもシミュレーションすることができる。
特に石材の色はインテリアの表情を決める大切な要素であるが、これは大きく顧客の好みによって左右されるため、タッチスクリーン・パネルの活用は欠かせないという。
また、同社ではアーティスティックなエレメントとしての石材需要が極めて高い。インドでは現在、屋内外の石材インテリアがブームとなっており、同社でも花瓶、花台、コンソールテーブルから墓石のモニュメントまで様々な特注の装飾品が人気である。
このように顧客が店内で選択した石材は、デリ市内であれば48時間以内に配送、施工は50年以上の実績を誇るピエール・ミネラルPVT社が行う。グラバーを拠点にした鉄壁のリフォーム体制が同社の強みなのである。
このように顧客が心から信頼・納得できる受注システムを作り上げることが石材リフォーム拡大の要となる。
- 1.
- 花崗岩をディスプレイしたプレゼンテーション・エリア
- 2.
- タッチパネルではキッチン・カウンターの花崗岩の色を自由に選択し、イメージを確かめることができる
- 3.
- 大理石の床にマッチしたインテリア性の高いフラワーベースと花台
ポイント
- 石材リフォームはまず石材の種類、性質、用途を知ってもらうことが肝要
- ショールームは顧客との相談・対話を目的に設計されなければならない
- 実際のリフォーム効果をイメージできるアプリケーション導入が受注拡大のポイント
- ディスプレイは石材を暮らしの中で応用できる情報提供が効果的
- 顧客の質問・疑問に答えられるオールマイティの場を持つことが信頼構築の要
- 【著者プロフィール】
海外流通研究所 橋本 昌也
世界の流通、特にホームセンター、住宅産業、eコマースなどに精通するコンサルタント。
リフォーム産業新聞にて好評連載中。
タカショー リフォームガーデンクラブでは、ウッドデッキを始めとしたエクステリアの作品や加盟店のご紹介をしています。